2025年6月12日号のNatureに掲載された最新研究で、POLG遺伝子変異による重篤なミトコンドリア疾患に対して、小分子化合物PZL-AがDNAポリメラーゼγ(POLγ)の機能を直接回復させることが報告されました。本研究はNature Highlightsにも選出されています。
POLGはミトコンドリアDNA(mtDNA)の複製に必須の酵素であり、これまで300種類以上の病的変異が報告されてきました。今回開発されたPZL-AはPOLγのアロステリック部位に結合し、病的変異を持つ酵素の活性を野生型レベルまで回復させることに成功。患者由来の線維芽細胞においてもmtDNAの複製能と酸化的リン酸化活性(OXPHOS)が顕著に改善されました。
本成果は、これまで治療法がなかったPOLG関連疾患に対して、初の疾患修飾型治療薬開発につながる可能性を示しています。
出典:Nature (2025年6月12日), 論文リンク
【ひとこと】
遺伝子修復のアプローチとは異なり、変異酵素自体の活性を小分子で回復させる戦略は非常に洗練された新しい治療概念です。ミトコンドリア病の患者さんにとって、新たな希望となる可能性を感じます。今後は臨床応用に向けたさらなる検証に注目したいと思います。