インフルエンザ予防に新時代到来?—CD388が示す「1回注射で1シーズン」保護効果
はじめに
これまでインフルエンザの予防といえばワクチンが主流でしたが、今その常識が覆ろうとしています。Cidara Therapeutics社が開発中の長期作用型抗インフルエンザ薬「CD388」は、1回の皮下注射で1シーズンの予防効果を発揮する可能性を示し、世界の注目を集めています。
臨床試験の結果と有効性
米国と英国で行われた第2相臨床試験には、インフルエンザワクチンを接種していない健康な成人5000人が参加。CD388の3用量群のうち、最高用量では76.1%の発症予防効果が確認されました。中用量では61.3%、低用量でも57.7%と、いずれも統計的に有意な結果が得られています。
CD388の仕組み
CD388は、1999年にGSKが上市した「リレンザ(ザナミビル)」を改良した化合物で、インフルエンザウイルス表面のノイラミニダーゼ(NA)を阻害します。Cidaraはこの有効成分をFc抗体断片に複数結合させ、体内分解を抑えて長期作用を実現しました。
従来ワクチンとの比較と利点
従来のワクチンは変異株への適合が必要で、平均有効率は40%程度にとどまります。一方、CD388は構造変化しづらい部位に作用することで、広範な株に対して安定した効果が期待されています。また、1回の注射で済む点は、服薬アドヒアランスや利便性の面でも大きな利点です。
課題と今後の展望
副作用は重篤なものは報告されておらず、安全性は高いと考えられます。ただし、NA阻害薬に対する耐性の問題は今後の観察が必要とされており、価格設定や流通体制も課題となるでしょう。
今後は2026年初頭より、南半球のフルシーズンでさらなる大規模臨床試験が予定されており、高リスク群へのワクチン併用戦略も検証される見込みです。
私のひとこと(所感)
CD388は、mRNAワクチンとは異なるアプローチで季節性インフルエンザ対策の選択肢を広げる画期的な一手になる可能性があります。高齢者や免疫抑制患者を対象にした予防策として、価格と供給面がクリアされれば実用化への期待が高まります。
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