新シリーズ 第1回:肺がんを調べ始めたら:咳・息切れだけで決めつけないための全体像|がんの不安をほどく:臓器別・基本の全体像

「咳が続く」「息切れが気になる」「健診のレントゲンで影があると言われた」。こうした時、検索を始めると情報が多すぎて不安が増えることがあります。

この記事は、生活者の方が落ち着いて状況整理できるように、肺がんの症状・受診の目安・検査・ステージ・治療を“見取り図”としてやさしくまとめます(※一般的な情報であり、診断や治療の代替ではありません)。

がん臓器別・基本の見取り図(家族のための最初の1本)

  • 本記事:肺がん(第1回)
  • 次に読む(予定):大腸がん/胃がん/乳がん…
目次

まず結論:今日やるべき整理は3つ

  • いまの症状(いつから/どんな咳か/息切れの程度)
  • きっかけ(健診・画像の指摘/家族の受診/たまたま撮ったCTなど)
  • 緊急性(すぐ受診すべきサインがあるか)

「肺がんかもしれない」と感じた時に一番大事なのは、決めつけないことと、放置しないことのバランスです。ここから順に見ていきましょう。

肺がんを疑う“きっかけ”は、他の病気とも重なる

肺がんに限らず、呼吸器の症状は風邪・喘息・COPD・肺炎・逆流性食道炎などでも起こります。だからこそ「症状だけで自己判定」より、検査で整理するのが近道です。

よくあるきっかけ(よくある=軽い、ではありません)

  • 咳が長引く(2〜3週間以上など)
  • 息切れ、階段がつらい
  • 血痰(痰に血が混じる)
  • 胸の痛み、背中の痛み
  • 原因不明の体重減少、食欲低下、だるさ
  • 健診の胸部X線で「影」や「要精密」

早めの受診が望ましいサイン(迷ったら医療機関へ)

  • 血痰が続く/増える
  • 呼吸が苦しい(息が吸いにくい、会話が苦しい)
  • 強い胸痛、発熱が続く、ぐったりする
  • 片側の麻痺、ろれつが回らない、けいれん、強い頭痛など神経症状

※ここは「怖がらせるため」ではなく、受診の目安をはっきりさせるための整理です。

最初の受診先はどこがよい?

  • 健診(胸部X線)で要精密:呼吸器内科、または健診先の紹介先
  • 咳・息切れが続く:まずは内科でも可(必要に応じて呼吸器内科へ)
  • 血痰・呼吸苦など強い症状:早めに医療機関(夜間や休日は救急相談も選択肢)

紹介状があると検査がスムーズなこともありますが、状況によってはまず受診して相談で問題ありません。

肺がんの検査は、だいたいこの順で進む(見取り図)

①「怪しいかどうか」を見る検査(入り口)

  • 胸部X線(健診で済んでいることも)
  • 胸部CT(より詳しく影の性質・位置・大きさを確認)
  • 血液検査(全身状態、炎症、貧血など)

多くの場合、最初の大きな分かれ道はCTです。ここで「経過観察でよさそうか」「精密検査へ進むか」の方向性が見えます。

②「がんかどうか」を確かめる検査(確定診断)

  • 痰の検査(喫煙歴や腫瘍の位置などで選択)
  • 気管支鏡検査(細胞・組織を採取する)
  • 針生検(病変の場所によって検討)

肺がんの診断は、最終的には細胞や組織を見て確かめる(病理診断)ことで確定します。

③「どこまで広がっているか」を調べる検査(ステージ評価)

  • 造影CT(胸部〜腹部)
  • PET-CT(必要に応じて)
  • 脳MRI(必要に応じて)
  • リンパ節評価(超音波内視鏡など:施設や状況で)

ここは「怖い検査」ではなく、治療を正しく選ぶための地図作りです。

④治療方針を決めるための検査(分子検査など)

肺がんでは、治療選択に関わる検査が重要になります。代表例として、以下のような検査が行われることがあります(病型や状況で異なります)。

  • 遺伝子変化(例:EGFR、ALK、ROS1など)
  • 免疫療法の目安になる検査(例:PD-L1など)

「検査が多くて不安」になりやすいポイントですが、これはあなた(家族)に合う治療を選ぶための材料です。

ステージは“重さのラベル”ではなく、治療を決める情報

ステージ(病期)は、乱暴に言えば「局所にとどまるか」「リンパ節に及ぶか」「遠くへ広がるか」を整理する枠組みです。

  • 局所(早期):手術や放射線で狙えることがある
  • リンパ節:手術+追加治療、あるいは化学放射線などを検討
  • 遠隔転移:全身治療(薬物療法)が中心になることが多い

大切なのは「ステージの数字」そのものより、その人にとっての最適な治療の組み合わせです。

治療の全体像:大きく4つ(目的はケースで変わる)

1) 手術

切除できる状況(早期〜一部の局所進行)では中心的な選択肢です。体力や肺機能、病変の位置なども含めて総合的に判断されます。

2) 放射線治療

手術が難しい場合に、定位放射線(ピンポイント)などが検討されることがあります。また、局所進行で化学療法と組み合わせる場面もあります。

3) 薬物療法(抗がん剤・分子標的・免疫療法など)

肺がんは、病型や検査結果によって治療の選択肢が変わります。「何が効く可能性が高いか」を検査で見極めていくのが特徴です。

4) 支える治療(症状の緩和・生活の支援)

痛み、咳、息苦しさ、食欲や睡眠など、生活の質を保つための治療や支援も重要です。これは“最後の手段”ではなく、治療と並走する大事な柱です。

受診前にメモしておくと話が早い(家族にも役立つ)

  • 症状:いつから、どんな咳か、息切れはどの程度か
  • 健診結果:胸部X線の所見、指摘の文言
  • 喫煙歴:現在/過去、年数や本数の目安
  • 既往歴:肺炎、喘息、COPD、結核歴など
  • 服薬:血液をサラサラにする薬など

よくある誤解(検索の沼を避ける)

  • 「咳=肺がん」ではありません。けれど長引くなら評価する価値があります。
  • 「影がある=がん確定」ではありません。炎症や良性の影もあります。
  • 「症状がない=大丈夫」とも限りません。健診が役立つのはこのためです。

まとめ(1分で復習)

  • 症状だけで決めつけず、まずは受診→CTで整理するのが近道
  • 診断は組織(細胞)で確定し、広がりを調べて治療を選ぶ
  • ステージは恐怖の数字ではなく、治療を決める地図
  • 治療は手術・放射線・薬物療法・支える治療の組み合わせ

次に読む(予定)

  • 大腸がん:症状・検査・治療をやさしく整理
  • 胃がん:ピロリ菌・胃カメラ・経過観察を落ち着いて理解する
  • 乳がん:しこりに気づいたら最初に知っておきたいこと


Morningglorysciences teamの編集です。

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し本格的に治療法・治療薬創出に取り組み、成功体験を得る。その後複数のグローバル製薬会社に在籍し、研究・ビジネス、そしてベンチャー創出投資家を米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。アカデミアにて大学院教員の役割も果たす。

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