アメリカの研究室で研究留学を始める――それは多くの若い研究者にとって、新たな成長と挑戦のスタートラインです。ただ、アメリカの研究文化・価値観・日常の進め方は、日本や他国とかなり異なる部分も多くあります。これから初めてアメリカで研究に取り組む方へ向けて、事前に知っておくと役立つ3つの視点をお伝えします。
① 「データを出す」ことの意味が違う
アメリカでは、データを出すとは「まず事実を出して議論の材料にする」ことです。失敗やネガティブデータも重要な情報源と捉えられます。まず手を動かし、早く現象を観察し、次の仮説を立てる流れが重視されます。成功だけを目指すのではなく、失敗も含めて積極的に実験し、その過程を共有することが評価されます。
② 自分の考えを積極的に発信する文化
PI(指導教員)やラボミーティング、セミナーでは「自分の考えを今どう整理しているか」を積極的に言葉にすることが求められます。完璧でなくても構いません。途中段階の仮説・疑問・考察をオープンに話す姿勢が高く評価されます。
③ 研究は「個人競技+チーム競技」
自分のプロジェクトは自分が主体的に進めますが、他のメンバーと知識や技術をシェアし合う文化が根付いています。共同実験・技術指導・データ解釈の議論など、積極的なコラボレーションは日常的に行われます。お互いを高め合う中で研究全体が加速します。
【ひとこと】
最初は文化の違いに戸惑うかもしれませんが、アメリカの研究現場では「自分の考えを整理し発信する力」が成長の核になります。私自身も現地で学んだのは、正しさよりも「現時点の考えを明確に言葉にする」ことの大切さでした。積極的に発言し、議論し、学び続ける姿勢が新しい道を拓きます。