2025年6月号のCell誌に掲載された最新研究により、細胞が休眠状態(quiescence)に入る過程と、再び増殖を再開する過程を統合的に制御する転写プログラムが明らかとなりました。本論文はCellの注目特集であるLeading Edgeにも選出されています。
研究チームは線維芽細胞をモデルに、細胞周期停止から休眠状態に移行する際の段階的な転写変化を時系列で解析。休眠導入時にはまず一時的な転写抑制(transcriptional downregulation)が起こり、続いて安定した低活動状態へ移行する可逆的な2段階制御が働くことを示しました。また、休眠からの再活性化時には迅速な転写回復が起こり、細胞周期再進入が可能となることが確認されました。
この知見は、組織幹細胞の維持やがん細胞休眠、老化研究など幅広い分野で今後の基盤情報となる可能性があります。
出典:Cell (2025年6月), 論文リンク(Leading Edge: 特集リンク)
【ひとこと】
細胞の休眠状態は正常組織の恒常性維持からがんの再発まで幅広く関わります。今回のように可逆的な転写プログラム全体像が整理されたことで、今後は休眠制御を標的とした創薬や再生医療への応用可能性も広がると感じます。
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