がん・代謝の陰に隠れがちですが、呼吸器/免疫炎症、CNS、感染症でも着実にディールは増えています。ここでは“束ね契約”の意味、地域分担の深化、HGR/データ越境などこの領域ならではの実務上の壁を、初心者にもわかる言葉で解説します。
導入表:主要ディール(その他領域)
| 中国側 | 相手先 | 資産/コード | モダリティ | 主要適応 | 契約タイプ/地域 | 規模(公表値) | 時期 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Hengrui | GSK(英) | HRS-9821+複数オプション | 小分子/吸入 ほか | COPD、R/I、Onco | 中国本土除く/オプション束ね | 前払5億$、最大120億$級 | 2025 |
| Zai Lab | Amgen(米) | Bemarituzumab | 抗体 | 胃/GEJ FGFR2b+ | 大中華圏 | — | 2017–(2025解析アップデート) |
| CanSino 等 | 多社 | 吸入ワクチン/抗ウイルス | ワクチン/小分子 | 呼吸器感染 | 地域限定・共同開発 | — | 2020– |
| 複数 | 欧米ファーマ | CNS候補 | 小分子/抗体 | 疼痛、抑うつ 等 | ex-China/共同 | — | 2021– |
1. 束ね契約の利点(再整理)
不確実性の高い領域では、単一資産に依存するとボラティリティが大きくなります。複数プログラムを 1 つのフレームに束ね、早期に選別、成功枝へ集中的に資金配分することで、パイプラインの時間価値を最大化できます。大手にとっては調達の安定化、中国側にとっては探索~初期臨床を面で回すメリットがあります。
2. 地域分担の深化(Greater China と ex-China)
人口規模や疾患負荷に加えて、価格・償還制度が欧米と非対称であることを前提に、データ創出と商業実装を分担します。ポイントは、MRCT をいつどの適応で組むか、ブリッジ試験が必要か、誰が責任を持つかを契約の早期に合意することです。
3. HGR/データ越境・個人情報(PIPL)への備え
検体・遺伝子データ・病原体情報など、扱うデータの機微性が高い領域では、HGR/PIPL への適合が最初のハードルです。共同研究と商用の線引き、データ保管・越境の条件、サンプル輸送の SOP を、契約本文と付属書で明文化し、運用の責任分担を明確にします。
4. CNS での現実解
CNS は評価指標が多面的で、臨床の一貫性を保つのが難しい領域です。デジタルバイオマーカーやウェアラブル指標、RWD を補助線に、探索から PoC までのリスクを段階的に下げる設計が有効です。中国側は実臨床データのボリュームを活かして探索段階を厚くし、海外パートナーは規制・商業の設計で価値を最大化する役割分担が現実的です。
5. 実務 Tips
- オプション発動条件は数値で定義 (PK/PD、曝露反応、有効性シグナル)。
- ロット一貫性やデバイス適合性など品質監査を入念に (吸入/生物製剤など)。
- 外乱 (アウトブレイク等) の影響を想定し、RWD で感度分析を補強。
次回予告
次回はシリーズ総まとめ「④ 規制改訂の歴史と背景分析・採用チェックリスト・今後の展望」。ICH-GCP整合、HKEX/STARの資本循環、HGR/PIPLの実務、ex-China標準化の意味を体系化し、ディール採用の判断基準と将来予測を提示します。


本記事は Morningglorysciences チームによって編集されました。

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