最新の研究によって、老化と肥満がそれぞれ独立に、そして相乗的にがん進行を促進することが示されました。一方で、体重減少が免疫環境を回復させ、腫瘍の進行を抑制できる可能性も浮かび上がっています。本記事では、この論文を軸に、がん・肥満・老化の関係と最新の科学的知見を整理して解説します。
1. 老化と肥満ががんを進行させるメカニズム
老化は遺伝子変異の蓄積や免疫老化を通じて、肥満は慢性炎症やホルモン環境の変化を通じて、それぞれががんのリスクを高めます。さらに両者が組み合わさることで免疫抑制が強化され、腫瘍進展が加速します。
2. UNC研究チームの最新成果(2025年)
マウス実験では、老化と肥満が相乗的にトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の増殖を促進しました。免疫関連遺伝子の抑制が見られましたが、間欠的カロリー制限(ICR)により免疫シグネチャーが回復し、腫瘍成長は有意に抑えられました。
3. がんと肥満 ― 世界的に注目される課題
肥満は少なくとも13種類以上のがんのリスク因子であり、特に閉経後乳がんや大腸がん、肝がんとの関連が報告されています。脂肪組織由来の炎症性サイトカインやホルモンの変化が重要な役割を果たしています。
4. がんと老化 ― 免疫老化と腫瘍微小環境の変化
加齢に伴い免疫監視機構が弱体化し、T細胞機能が低下します。また、老化線維芽細胞が分泌するSASP因子が腫瘍進行を助長することも示されています。
5. 肥満と老化の相乗効果
論文では、老化と肥満が重なったマウス群で最も腫瘍増殖が大きく、免疫関連シグネチャーの抑制も最大でした。これは臨床的に高齢肥満者に相当し、がん治療上の大きな課題を示しています。
6. 体重減少介入の可能性
間欠的カロリー制限や慢性的カロリー制限、さらにはバリャトリック手術はいずれも免疫環境を改善する効果を持ちます。臨床データでも、持続的な体重減少が肥満関連がんの発症率を低下させることが示されています。
7. 今後の展望
「がん・肥満・老化」という三位一体の課題に対して、体重減少による予防戦略や免疫療法との併用が注目されています。特に高齢肥満者への安全で持続可能な介入方法の開発が急務です。
まとめ
老化と肥満は共にがん進行を促進する要因であり、両者が重なると免疫抑制が強まりリスクが最大化します。一方で、体重減少は免疫環境を若返らせ、腫瘍抑制に寄与する可能性があります。今後は、これらの知見を臨床にどのように応用するかが重要な課題です。
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この記事はMorningglorysciencesチームによって編集されました。
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