2025年6月号のCancer Discovery誌に掲載された最新研究により、食道扁平上皮がん(ESCC)の発症過程において、多数のドライバー変異を獲得した高変異細胞が長期間にわたり潜伏状態(休眠)を維持し、その後にがん化へ移行する仕組みが明らかになりました。
研究チームは正常食道組織から長期間にわたるサンプル解析を行い、NOTCH1やTP53など複数のドライバー変異を持つ細胞クローンが10年以上安定して存在する例を多数確認しました。これらの潜伏細胞は細胞分裂をほとんど行わず、慢性炎症や追加変異の蓄積など環境因子によって発がんへと進行する可能性が示唆されました。
この知見は、がん予防や早期発見に向けた新たなバイオマーカー探索、個別化リスク評価に繋がる重要な基盤情報となります。
出典:Cancer Discovery (2025年6月), 論文リンク
【ひとこと】
がん発症前の「潜伏期」に注目した今回の研究は、がんの成り立ちを捉え直す重要な視点を提供しています。多段階発がん説がより精緻に理解されつつあり、こうした知見は将来的な予防介入やモニタリング技術の発展にも繋がると感じます。
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