【Science News】KRAS阻害と免疫依存性:膵臓がん治療における免疫系の役割を解明(Cancer Discovery要約/ひとこと付)

2025年6月にCancer Discovery誌オンライン版に掲載された最新研究により、KRAS G12D阻害薬による膵臓がん(PDAC)治療において、**T細胞依存性の腫瘍退縮メカニズム** が重要な役割を果たすことが示されました。

膵がんではKRAS G12D変異が主要ドライバー変異とされ、各社がKRAS G12D阻害薬の開発を加速しています。本研究では、KRAS G12D阻害薬投与により一部の腫瘍は退縮するものの、治療効果の持続や完全寛解には免疫系(特にCD8陽性T細胞)の関与が不可欠であることがマウスモデルで明らかとなりました。

さらに、免疫系の活性が不十分な状態では腫瘍が免疫回避機構を獲得し、薬剤耐性が形成される経路も確認されました。KRAS阻害単独では限界があり、**免疫療法との併用戦略の重要性** が強調されています。

本研究は、開発競争が激化するKRAS標的創薬分野において、今後の治療設計に新たな方向性を提示する内容となっています。

出典:Cancer Discovery (2025年6月オンライン先行), 論文リンク

【ひとこと】

KRASは膵がん治療の「最後のフロンティア」とも呼ばれますが、阻害薬単独では十分な治療効果が得られない現実があります。今回の研究は、KRAS阻害+免疫活性化の併用戦略が今後の突破口になる可能性を示しており、治療設計の大きな方向性を感じます。

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し本格的に治療法・治療薬創出に取り組み、成功体験を得る。その後複数のグローバル製薬会社に在籍し、研究・ビジネス、そしてベンチャー創出投資家を米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。アカデミアにて大学院教員の役割も果たす。

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