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呼吸器ウイルス感染は乳がんの転移リスクをどう変えるのか:最新知見と現実的な向き合い方
乳がんは寛解後も、体内のどこかに「休眠」状態のがん細胞(DCC: disseminated cancer cells)が潜み、年単位で再増殖(覚醒)して転移を起こすことがあります。近年、インフルエンザやSARS-CoV-2(新型コロナ)などの呼吸器ウイルス感染が、肺に潜む乳が... -
がん免疫治療におけるNK細胞の「二面性」 Part 2:治療戦略と今後の展望
Part 1では、NK細胞が免疫チェックポイント阻害剤(ICB)治療に対する抵抗性に寄与する仕組みを整理しました。後編となる本記事(Part 2)では、臨床的な含意と治療戦略、そして今後の展望を解説します。 臨床的含意 複数の研究から、腫瘍内のNK細胞量が多... -
がん免疫治療におけるNK細胞の「二面性」 Part 1:免疫抑制的役割と臨床的抵抗性のメカニズム
ナチュラルキラー(NK)細胞は従来、腫瘍監視の最前線を担う「抗腫瘍エフェクター」として理解されてきました。しかし近年の研究は、腫瘍微小環境におけるNK細胞の役割が単純ではないことを示しています。特に免疫チェックポイント阻害剤(ICB)治療の効果... -
肥満薬の最新動向 後編:日米欧で異なるGLP-1肥満薬の薬価・保険事情 ― 医療制度が市場をどう形づくるか
序章:薬があっても支払えなければ普及しない GLP-1肥満薬は世界中で需要が爆発していますが、最大の課題は「誰が費用を負担するか」です。価格は月あたり数十万円規模に達し、持続的投与を前提とするため医療財政に大きな負担を与えます。そのため、各国... -
Claudin18.2 ADC開発 Part 4:世界的な開発動向と今後の展望
Claudin18.2(CLDN18.2)を標的としたADCは、進行胃がん・食道胃接合部(GEJ)がん治療の新しい柱として、アジアを中心に世界で開発が加速しています。本記事では、SHR-A1904・IBI343に続き、他の主要パイプライン(CMG901、EO-3021、XNW27011など)を紹介... -
肥満薬の最新動向 前編:Novoレイオフが示すGLP-1肥満薬市場の次なる局面 ― 新薬創出と開発競争序章:Novoのレイオフ発表が象徴する業界の転換
序章:Novoのレイオフ発表が象徴する業界の転換 2025年9月、Novo Nordiskは全従業員の約12%にあたる9,000人規模のレイオフを発表しました。背景には、GLP-1肥満薬市場の過熱と競争激化、そしてEli Lillyの圧倒的な攻勢があります。Novoは経営資源をスリム... -
Claudin18.2 ADC開発 Part 3:SHR-A1904とIBI343の比較と臨床的位置づけ
Claudin18.2(CLDN18.2)を標的としたADC開発は、SHR-A1904とIBI343の二つの第1相試験によって大きく前進しました。本記事では両試験を比較し、薬剤設計・有効性・安全性の違いを整理した上で、Zolbetuximabを含む既存治療との位置づけを議論します。 試験... -
Claudin18.2 ADC開発 Part 2:IBI343第1相試験の結果と臨床的特徴
本記事では、Nature Medicineに2025年7月に報告されたIBI343(Innovent Biologics開発)の第1相試験を整理し、構造上の特徴、安全性、有効性、そしてClaudin18.2 ADC開発の流れの中での位置づけについて解説します。 薬剤概要:IBI343の分子設計 IBI343は... -
胃がんオルガノイド×腸管神経で見えた「脂質代謝の急所」— 創薬におけるオルガノイド培養の強みと限界、そして次の一手
要旨(ひとことで): 患者由来胃がんオルガノイドで全ゲノムCRISPRスクリーニングを行い、脂肪酸合成(ACC/ACACA)とコレステロール生合成(LSS)への強い依存性を同定。腸管神経(ENS)との共培養が代謝経路を組み替え、ACC阻害に耐性化/LSS阻害に感受性... -
最新HER2 ADC特集 後編|知財戦略と世界的過当競争、そして未来への展望
前編では、HER2 ADCの薬効面での差別化とエンハーツの革新性について解説しました。後編となる本稿では、各社の知財戦略、特許存続期間の優位性、そして世界で進む過当競争の実態を掘り下げます。最後に、私自身の視点から「HER2 ADC市場の未来像」につい... -
Claudin18.2 ADC開発 Part 1:SHR-A1904第1相試験の結果と臨床的意義
Claudin18.2(CLDN18.2)を標的とする抗体薬物複合体(ADC)は、近年進行胃がんおよび食道胃接合部(GEJ)がんにおける新しい治療モダリティとして注目されています。本記事では、2025年7月にNature Medicineに発表されたSHR-A1904の第1相試験について詳細... -
最新HER2 ADC特集 前編|エンハーツ誕生と薬効差別化による第二次ADCブーム
抗体薬物複合体(ADC)は、がん治療の新たな武器として注目を集めています。その中でもHER2を標的とするADCは、ロシュのKadcyla登場から約10年を経て、第一三共とアストラゼネカによるエンハーツの登場で第二次ブームを迎えました。本記事(前編)では、エ... -
Claudin18.2 ADC開発 Part 0:シリーズ総合イントロダクション
本シリーズでは、Claudin18.2(CLDN18.2)を標的とした抗体薬物複合体(ADC)の最新開発動向を、全5回構成で徹底的に解説します。本イントロダクション(Part 0)では、CLDN18.2研究の背景、抗体療法からADCへと至る流れ、そして各パートの構成を紹介しま... -
最新科学ニュース:cPLA2が作る「G2特異的ストレス顆粒」が化学療法耐性を左右する:PDACで見えた新しい脆弱性
膵管腺がん(PDAC)を中心に、がん細胞集団の中でストレス顆粒(Stress Granules; SG)の量と質に大きな細胞間ヘテロ性が存在し、なかでもG2期細胞でSGが突出して増えること、そしてその駆動役がcPLA2 → 15d-PGJ2経路であることが明らかになりました。本稿... -
ニュース解説|蛍光タンパク質が「量子スピン量子ビット」に—生命科学に広がる新しい量子センシング
論文:A fluorescent-protein spin qubit(Nature, 2025年9月4日) 要旨(3行で) 遺伝子導入できる蛍光タンパク質(EYFP)が、光で初期化・読み出し・制御できるスピン量子ビットとして実証されました。 液体窒素温度で約16 μsのコヒーレンス(CPMG下)と... -
News Watch|低酸素×腎:tRNA由来スモールRNAが「RNAオートファジー」で腎を守る
リード:腎は低酸素に陥りやすく、AKIやCKDの悪循環の起点になります。最新のScience 2025論文は、低酸素で誘導される「tRNA-Asp-GTC-3′tDR」という小分子RNAが、RNAオートファジーを駆動し腎細胞を保護する仕組みを提示しました。従来のHIF/代謝リプログ... -
がんと老化促進:分子細胞レベルから読み解く最新知見
近年、「がん」と「老化」は別々に研究される対象ではなく、深く結びついた現象として理解されつつあります。がん患者で観察される免疫低下や慢性炎症は、単に治療の副作用だけでなく、腫瘍そのものが宿主の細胞や組織に「老化」を促す可能性があるのです... -
News Watch: in vivo CAR-T RACE(2025年最新動向・総まとめ)
最終更新:2025-09-01 JST リード:ex vivo(体外製造)から in vivo(体内でCAR化)へ――細胞治療の重心が移りつつあります。直近では大型買収の連発、初回投与(first-patient-dosed)、フェーズ1進捗が相次ぎ、ウイルスベクター系(Umoja/Interius/Kel... -
News Watch:EV × 神経系 × がん免疫の最前線――腫瘍由来sEVが感覚神経を再プログラムし、免疫抑制を駆動する(IL-6/IL-6R軸と適応拡大の可能性まで)後編
IL-6R阻害薬と企業マップ(2025年8月時点) 本稿のIL-6/IL-6R軸に関する考察を踏まえ、「誰がIL-6R阻害薬を保有し、何に使われているか」を整理します。将来的な適応拡大/腫瘍免疫との併用を想定するうえで、パートナー候補や**供給力(原薬・製剤・皮下... -
転写因子とDNA修復の衝突:突然変異とNeoantigen創生が切り拓くがん免疫療法の新戦略
イントロダクション:転写因子とDNA修復の新たな関係 近年のがん研究では、DNAの複製エラーや修復機構の破綻が腫瘍発生の中心的な要因であることが明らかにされてきました。これまでの研究は、DNA複製エラーを修復する「ミスマッチ修復(MMR)」が、がん抑...