がん治療薬ニュース速報:H3 K27M変異型びまん性正中神経膠腫に対する初の全身療法、ドルダビプロン(Modeyso)がFDA迅速承認

2025年8月6日、米国食品医薬品局(FDA)は、H3 K27M変異を有する進行性びまん性正中神経膠腫(DMG)に対する新規プロテアーゼ活性化薬「ドルダビプロン(dordaviprone、商品名Modeyso、Jazz Pharmaceuticals社)」を迅速承認しました。本剤は成人および1歳以上の小児患者を対象とし、この疾患に対する初めての全身療法として承認された画期的な事例です。

目次

承認の背景と意義

びまん性正中神経膠腫は極めて予後不良な中枢神経系腫瘍で、特にH3 K27M変異を有する症例は治療選択肢が限られてきました。これまで全身療法の承認例はなく、今回の承認は新たな治療パラダイムを開くものです。

臨床試験の概要

  • 対象:H3 K27M変異DMGの成人および小児50例
  • 試験デザイン:米国内5件の非ランダム化オープンラベル試験(NCT02525692、NCT03295396、NCT03416530、NCT05392374、NCT03134131)
  • 主要評価項目:RANO 2.0基準による盲検中央判定の全奏効率(ORR)
  • 結果:ORR 22%(95% CI: 12–36)、奏効持続期間(中央値)10.3か月
  • 奏効例のうち73%が6か月以上、27%が12か月以上持続

安全性と用法用量

添付文書では、過敏症、QTc延長、胎児毒性の警告が記載されています。成人は625 mgを週1回経口投与、小児は体重に基づく投与量が推奨されています。

特別指定と迅速審査

本剤は希少疾病用医薬品(Orphan Drug)、小児希少疾病(Rare Pediatric Disease)、ファストトラック(Fast Track)指定を受け、優先審査で承認されました。

今後の展望

ドルダビプロンの承認は、DMGの治療研究を加速させる可能性があります。長期予後改善にはさらなる臨床データの蓄積が不可欠であり、今後の追跡試験結果に注目が集まります。

出典:FDA, AACR FDA Approval Alert(2025年8月6日)

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し本格的に治療法・治療薬創出に取り組み、成功体験を得る。その後複数のグローバル製薬会社に在籍し、研究・ビジネス、そしてベンチャー創出投資家を米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。アカデミアにて大学院教員の役割も果たす。

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