米国食品医薬品局(FDA)は2025年10月、GSK社の抗BCMA抗体薬物複合体(ADC)ベランタマブ・マフォドチン(belantamab mafodotin, Blenrep)を、ボルテゾミブ(bortezomib)およびデキサメタゾンとの併用療法として再承認しました。
本承認は、再発または難治性多発性骨髄腫(RRMM)を対象とした第III相試験「DREAMM-7試験」の結果に基づいています。Blenrepは一度市場から撤退した後、臨床データの改良を経て再び有効性を示し、再承認に至りました。
DREAMM-7試験の結果概要
- 対象:再発または難治性多発性骨髄腫患者
- 治療群:Blenrep+ボルテゾミブ+デキサメタゾン vs ダラツムマブ併用療法群
- 主要評価項目:無増悪生存期間(PFS)
- 結果:Blenrep群で疾患進行リスクを約50%低減(HR=0.50)
- 奏効率(ORR):Blenrep群で約80%、対照群で約60%
視力低下や角膜障害などの既知の副作用は管理可能であり、投与スケジュールの最適化によって安全性プロファイルが改善されました。
臨床的意義
本承認により、Blenrepは再発・難治性多発性骨髄腫治療における再評価を受けることとなりました。 特に抗BCMA療法の中で、CAR-Tやバイスペシフィック抗体と異なり、オフ・ザ・シェルフ(既製品)ADC療法として使用可能な点が臨床上の利便性を高めています。
また、再承認はFDAが適応集団の再定義と実臨床での安全管理を重視する方向に転換していることを示す象徴的事例ともいえます。
研究開発の展望
GSKは現在、Blenrepを他の免疫療法(例:PD-1阻害薬)や新規BCMA標的薬との併用試験も進めており、耐性克服と治療持続性の向上が焦点となっています。
今回の再承認は、BCMA領域における「第2章」の始まりであり、ADCの設計最適化・投与間隔の再構築・眼毒性の制御が今後の開発の鍵を握ると考えられます。
私の考察
Blenrepの再承認は、単なる「復帰」ではなく、臨床現場のニーズと実用性を再定義した成果といえます。 臨床試験でのPFS改善は明確でありながらも、眼毒性などのリスクを現実的に管理するアプローチが実装された点に意義があります。 ADC治療の成熟段階に入りつつある今、“より長く・より安全に・より簡便に”という方向性を象徴する承認といえるでしょう。
この記事はMorningglorysciences編集部によって制作されました。
アーカイブ:FDAがん治療薬承認
・2025

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