2025年12月4日、米国FDAは、少なくとも2ライン以上の全身療法を受けた成人の再発または難治性辺縁帯リンパ腫(marginal zone lymphoma, MZL)患者を対象に、CD19標的CAR-T細胞療法であるリソカブタゲン マラルユーセル(lisocabtagene maraleucel, Breyanzi, Juno Therapeutics/Bristol Myers Squibb)を承認しました。
本適応は、以下の成人患者を対象としています。
- 再発/難治性MZL
- 2ライン以上の全身療法歴、または造血幹細胞移植(HSCT)後再発
TRANSCEND FL-MZL Cohort(NCT04245839)の概要
今回の承認は、TRANSCEND FL-MZL Cohort(NCT04245839)の結果に基づいています。
- 試験デザイン:オープンラベル、多施設、単群試験
- 対象:再発/難治性MZLを有し、
- 少なくとも2ライン以上の全身療法歴、または
- 造血幹細胞移植(HSCT)後に再発した成人患者
- ECOG PS 0–1
前処置(リンパ球除去化学療法):
- フルダラビン:30 mg/m²/日
- シクロホスファミド:300 mg/m²/日
- 上記を3日間、同時併用で実施
CAR-T投与:
- リソカブタゲン マラルユーセル単回投与
- 前処置完了後2〜7日以内に点滴投与
解析集団:
- ITT集団(白血球アフェレーシスを受けた77例)
- 治療解析集団:66例
- ベースラインでCTにより測定可能病変を有し
- 所定の用量範囲で製剤投与を受け
- 初回奏効から少なくとも9か月以上の追跡を完了
主な有効性結果:高い奏効率と持続する効果
主要有効性評価項目は、独立評価委員会がLugano基準に基づき評価した以下の2点です。
- 全奏効率(overall response rate, ORR:完全奏効〔CR〕+部分奏効〔PR〕)
- 奏効期間(duration of response, DOR)
ITT集団(n=77)における結果:
- ORR:84.4%(95% CI:74.4, 91.7)
- 完全奏効率(CRR):55.8%(95% CI:44.1, 67.2)
- 奏効期間(DOR)中央値:未到達(NR)
- 95% CI:25.59か月〜NR
再発/難治性MZLという難治集団において、8割超のORRと約半数のCRR、さらに中央値未到達のDORが示された点は、本治療の強い抗腫瘍活性と奏効の持続性を示すものと言えます。
安全性と主な警告・注意事項
Breyanziの添付文書には、CAR-T治療に特徴的な以下の警告・注意事項が含まれます。
- サイトカイン放出症候群(CRS)
- 神経毒性(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群を含む)
- 過敏症反応
- 重篤な感染症
- 遷延する血球減少(prolonged cytopenias)
- 低ガンマグロブリン血症
- 二次性悪性腫瘍
- 免疫エフェクター細胞関連血球貪食性リンパ組織球症様症候群 (immune effector cell–associated HLH-like syndrome)
実臨床では、CRS・神経毒性への早期対応(グレード評価、トシリズマブ/ステロイドの使用)や、長期にわたる血球減少・感染リスク・低ガンマグロブリン血症に対するモニタリングと支持療法が重要です。
用法・用量
推奨用量は以下の通りです。
- リソカブタゲン マラルユーセル
- 90〜110 × 106 個のCAR陽性生存T細胞
- CD4陽性成分とCD8陽性成分を1:1の比率で含む単回投与
前処置化学療法(フルダラビン+シクロホスファミド)の後、2〜7日以内に点滴投与します。
規制面:Priority Reviewとオーファンドラッグ指定
- 本承認審査には、申請者が任意提出するAssessment Aidが活用され、FDA審査の効率化が図られました。
- 本申請はPriority Review(優先審査)に指定されました。
- BreyanziはMZLに対してオーファンドラッグ指定を受けています。
また、FDAは重篤疾患を対象とした迅速化プログラムについて、
「Expedited Programs for Serious Conditions – Drugs and Biologics」および
再生医療の迅速化プログラムについて「Expedited Programs for Regenerative Medicine Therapies for Serious Conditions」ガイダンスを公表し、枠組みを整理しています。
Morningglorysciences 編集部コメント
辺縁帯リンパ腫(MZL)は、一般にインドレントな経過を示す一方、多発再発を繰り返し、標準治療を使い切った後の選択肢が限られるサブタイプです。今回、CD19標的CAR-TであるBreyanziが再発/難治性MZLに対して高いORR・CRRと長い奏効期間を示したことは、「治療の打ち止め」になりがちな患者に、新たな治療ラインを提供しうる承認と言えます。
一方で、
- CRSや神経毒性を含む急性期毒性
- 長期的な血球減少・感染リスク・低ガンマグロブリン血症
- CAR-T特有の施設要件(入院体制、人員、コスト)
- 高額な医療費とアクセス格差
といった課題は依然として重く、患者選択と施設間連携が鍵になります。
今後は、
- 他のB細胞リンパ腫サブタイプとの比較・シーケンス戦略
- 早期ラインでの位置づけ
- bispecific抗体や他の免疫療法との棲み分け
などが、臨床現場と開発現場の両面で重要なテーマになっていくでしょう。
※本記事はAACR “FDA Approval Alert”およびFDA公表資料を基に、Morningglorysciencesが独自に要約・整理したものです。

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