がん治療薬承認速報 Oncology Drug Approval News Flash:プラチナ抵抗性卵巣がんに対するペムブロリズマブ+パクリタキセル±ベバシズマブ併用療法がFDA承認

FDA承認の概要

2026年2月10日、米国食品医薬品局(FDA)は、ペムブロリズマブ(pembrolizumab, Keytruda, Merck)およびペムブロリズマブ+ベラヒアルロニダーゼ alfa-pmph 皮下注製剤(pembrolizumab and berahyaluronidase alfa-pmph, Keytruda Qlex, Merck)について、以下の適応を承認しました。

  • 成人のプラチナ抵抗性上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんで、
  • 腫瘍がPD-L1 CPS ≥ 1 を満たすこと(FDA承認コンパニオン診断により判定)、かつ
  • これまでに1〜2ラインの全身治療歴を有する患者

治療は、ペムブロリズマブ(静注)またはペムブロリズマブ+ベラヒアルロニダーゼ alfa-pmph(Keytruda Qlex, 皮下注)を、パクリタキセル±ベバシズマブと併用して実施します。

同時に、Agilent Technologies社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDxがコンパニオン診断薬として承認され、PD-L1 CPS ≥ 1 の患者選択に用いられます。


KEYNOTE-B96試験(NCT05116189)の概要

本承認は、KEYNOTE-B96試験(NCT05116189)の結果に基づいています。

  • 試験デザイン:多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験
  • 対象:
    • プラチナ抵抗性の上皮性卵巣がん/卵管がん/原発性腹膜がん
    • 既治療ライン数:卵巣がんに対する全身療法 1〜2ライン
    • 少なくとも1ラインのプラチナ製剤ベース化学療法を受け、その最終投与から6か月以内に放射線学的再発・進行を認めた症例
  • 登録症例数:643例
  • ランダム化:1:1で以下のいずれかに割り付け
    • ペムブロリズマブ+パクリタキセル±ベバシズマブ
    • プラセボ+パクリタキセル±ベバシズマブ

主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく治験担当医評価の無増悪生存期間(PFS)であり、全生存期間(OS)が追加の有効性評価項目として設定されました。


有効性:PD-L1 CPS ≥1 集団でのPFS・OS改善

あらかじめ規定された主要評価集団は、PD-L1 CPS ≥ 1を有する466例のサブセットです。

  • 無増悪生存期間(PFS, PD-L1 CPS ≥1, n=466):
    • ペムブロリズマブ群:中央値 8.3か月(95% CI:7.0, 9.4)
    • プラセボ群:中央値 7.2か月(95% CI:6.2, 8.1)
    • ハザード比(HR):0.72(95% CI:0.58, 0.89)、p = 0.0014
  • 全生存期間(OS, PD-L1 CPS ≥1, n=466):
    • ペムブロリズマブ群:中央値 18.2か月(95% CI:15.3, 21.0)
    • プラセボ群:中央値 14.0か月(95% CI:12.5, 16.1)
    • HR:0.76(95% CI:0.61, 0.94)、p = 0.0053

プラチナ抵抗性卵巣がんという予後不良集団において、ペムブロリズマブ併用によりPFS・OSともに統計学的に有意な延長が認められた点が、本承認の根拠となっています。


安全性プロファイルと主な注意事項

KEYNOTE-B96におけるペムブロリズマブ+パクリタキセル±ベバシズマブの安全性プロファイルは、他のがん種での既存データと概ね類似していました。添付文書上の主な警告・注意事項は以下の通りです。

  • 免疫関連有害事象(肺炎、大腸炎、肝炎、内分泌障害、皮疹など)
  • 輸注関連反応
  • 同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)を受けた患者における合併症
  • 胎児毒性(embryo-fetal toxicity)

プラチナ抵抗性卵巣がん患者は、既治療により骨髄予備能が低下していることも多く、パクリタキセル±ベバシズマブに起因する血球毒性や血栓症リスクと、免疫関連有害事象が重なり得る点に留意が必要です。


用法・用量

ペムブロリズマブ(Keytruda, 静注):

  • 200 mgを3週間ごと、または
  • 400 mgを6週間ごと
  • いずれも病勢進行または許容できない毒性が発現するまで、最長24か月間投与

ペムブロリズマブ+ベラヒアルロニダーゼ alfa-pmph(Keytruda Qlex, 皮下注):

  • 395 mg/4,800単位を3週間ごと、または
  • 790 mg/9,600単位を6週間ごと
  • 同様に、病勢進行または許容できない毒性、もしくは最長24か月まで投与継続

ペムブロリズマブ(静注またはQlex皮下注)は、同一投与日に実施する場合にはパクリタキセル±ベバシズマブより前に投与します。パクリタキセルおよびベバシズマブについては、各製剤の添付文書に準拠した用量・スケジュールを用います。


規制上の位置づけ:Project Orbis・Priority Review

本審査は、FDA Oncology Center of Excellenceが主導する国際共同審査枠組みProject Orbisのもとで実施されました。

  • 今回の審査では、オーストラリア保健省 Therapeutic Goods Administration(TGA)、Health Canada(HC)、スイス Swissmedic(SMC)と協働
  • 申請はPriority Review(優先審査)の対象
  • 申請者の任意提出資料であるAssessment Aidが用いられ、審査効率化に寄与
  • FDAの迅速化プログラム全体は、“Expedited Programs for Serious Conditions – Drugs and Biologics”ガイダンスに整理されている

Morningglorysciences 編集部コメント

プラチナ抵抗性卵巣がんは、治療オプションが限られ、予後も依然として不良な領域です。標準的には、週1回パクリタキセルやPEG化ドキソルビシン、トポテカン、ベバシズマブ併用レジメンなどが用いられますが、奏効しても持続期間が短く、「時

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し本格的に治療法・治療薬創出に取り組み、成功体験を得る。その後複数のグローバル製薬会社に在籍し、研究・ビジネス、そしてベンチャー創出投資家を米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。アカデミアにて大学院教員の役割も果たす。

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