本シリーズでは、Claudin18.2(CLDN18.2)を標的とした抗体薬物複合体(ADC)の最新開発動向を、全5回構成で徹底的に解説します。本イントロダクション(Part 0)では、CLDN18.2研究の背景、抗体療法からADCへと至る流れ、そして各パートの構成を紹介します。
なぜClaudin18.2が注目されるのか
胃がんおよび食道胃接合部(GEJ)がんは依然として世界的な死亡率の高い腫瘍です。近年HER2標的治療や免疫チェックポイント阻害剤の導入により一部の患者で治療成績が改善しましたが、多くの症例では依然として予後不良です。
CLDN18.2は胃粘膜に特異的に発現し、腫瘍化によって細胞表面に露出するため、治療標的として理想的と考えられています。最初に開発された抗体療法Zolbetuximabは2024年にFDA承認を受けましたが、その効果は限定的であり、より強力かつ直接的に腫瘍を攻撃できるADCへの期待が高まっています。
シリーズの構成
本シリーズは以下の構成で展開されます。
- Part 1: SHR-A1904の第1相試験(Nature Medicine報告)の結果と臨床的意義
- Part 2: IBI343の第1相試験(Nature Medicine報告)の結果と技術的特徴
- Part 3: SHR-A1904とIBI343の比較、安全性・有効性の相違と位置づけ
- Part 4: 世界のClaudin18.2 ADC開発状況(CMG901、EO-3021、XNW27011など)と総合展望
本イントロ(Part 0)を含めることで、シリーズ全体を体系的に理解できるよう設計しました。
本シリーズの意義
本シリーズは、単なる論文紹介にとどまらず、臨床試験設計・分子構造・毒性プロファイル・耐性克服戦略などを総合的に解説します。さらに、著者自身の考察を各回に加えることで、今後の臨床応用や開発戦略を読者が展望できる構成としています。
次回以降の展開
Part 1ではSHR-A1904を中心に、第1相試験の詳細と臨床的意義を深掘りします。その後、IBI343(Part 2)、両者の比較(Part 3)、世界的な開発動向(Part 4)へと進みます。
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この記事はMorningglorysciencesチームによって編集されました。
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