Glioblastoma シリーズ|Part 7:世界のいま――モダリティ別・開発状況マップ

世界のいま――モダリティ別・開発状況マップ

これまで学んだ「芽(pre-CC)」「場(微小環境)」「移動性」「可塑性」「識別(複合診断)」を踏まえ、世界の開発をモダリティ(治療手段)別に鳥瞰します。特定薬剤名は最小限にし、設計思想と臨床導線を中心に整理します。

目次

このマップの読み方

  • 目的軸:腫瘍そのもの芽(pre-CC)場(免疫・ECM)移動性BBB/送達
  • 成熟度:基盤(標準)拡張(承認/ガイドラインにより選択)開発(Phase1–3)
  • 組み合わせ前提:単剤最適化→多点併用へ。Part 5–6の可塑性と複合診断が鍵。

基盤(標準+周辺拡張)

手術・放射線・TMZ 標準

  • 最大安全切除 → 放射線+テモゾロミド(同時併用→維持)。
  • MGMTメチル化でベネフィットの層別(Part 1・6)。

腫瘍治療電場(TTF) 拡張

  • 装着デバイスによる分裂阻害。アドヒアランスが鍵。
  • TMZや再発治療との組み合わせ設計が検討されている領域。

分子標的・細胞周期(OPC様の“増殖”を抑える)

細胞周期阻害

  • WEE1 / ATR / CHK1 など:OPC-like高活動時の抑えとして仮説的に適合。
  • 放射線増感との組み合わせ設計が中心。

EGFR/RTK・PI3K軸

  • EGFR増幅・EGFRv様変化、PTEN欠失に連動(Part 6)。
  • BBB/腫瘍不均一・可塑性により併用前提の議論が主流。

免疫・微小環境(“点火役”と抑制環境を冷ます)

チェックポイント & 周辺

  • 単剤は限定的。ワクチン/ウイルス療法/局所投与などと併用設計。
  • T細胞浸潤・抗原提示の底上げが狙い。

ミエロイド標的・MIF–CD74など

  • マクロファージ/TAMのトーン変換、抑制性サイトカイン抑止。
  • Part 3で扱った“点火役”の早期遮断を、他軸と組み合わせ。

BBB/送達・局所療法(“届く”を解く)

物理・機械的送達

  • 集束超音波による一時的BBB開放。
  • 対流増強送達(CED)・カテーテル局所投与。

ナノ粒子・担体設計

  • 薬剤・核酸・タンパクのキャリア化、腫瘍集積の最適化。
  • 画像誘導下での局在評価との統合が進む。

放射性/中性子反応など局在型

  • 腫瘍局在で反応を起こす発想(選択的線量集中)。
  • 適応や施設要件に依存、他治療とのタイミング設計が重要。

生物学的治療(ウイルス・ワクチン・細胞治療)

溶瘍性ウイルス/遺伝子導入

  • 腫瘍内投与で免疫原性を高め、チェックポイントへ橋渡し。
  • 安全性・拡散制御・投与ルートの工夫が焦点。

ワクチン(ペプチド/樹状細胞 等)

  • 複数抗原・個別化に向かう潮流。複合診断で適合を高める。
  • 局所療法や放射線との同調が鍵。

細胞治療(CAR/TCR など)

  • 標的異質性・抗原逸脱により多標的設計が議論。
  • 局所投与・リピート投与・安全スイッチ搭載が検討点。

抗浸潤(ECM・接着・形態適応)

  • インテグリン/FAK/Rho-ROCK、MMP/ADAM などの抑制で“経路を狭める”。
  • 増殖抑制×抗浸潤の二面作戦(Part 4)をベースに可塑性対策を重ねる。

組み合わせ設計テンプレ(例)

患者像(複合診断)設計の主眼補助軸
OPC様高+7+/10−+EGFR活性細胞周期抑制+放射線最適化送達(CED/超音波)・微小環境冷却
MES様偏位+浸潤経路明瞭(DTI)ECM/接着抑制+増殖抑制免疫/ミエロイド調整・局所投与
pre-CC署名高+SVZ近接早期介入(“芽”+場の同時抑え)画像誘導・低侵襲局所療法の併用

アクセスと実装(国・施設格差の要点)

  • 高次画像・分子診断・局所送達デバイスの整備状況に差。
  • 保険適用・治験導線・登録制度が臨床アクセスを左右。
  • 詳細はPart 8で国別の強みとして整理します。

一旦のまとめ

  • 世界の開発は、増殖・場・移動性・送達の多点をつなぐ方向に収束。
  • 複合診断送達の工夫が、併用効果の“実効性”を決める。
  • 国・施設の条件で到達可能な組み合わせが変わる(Part 8へ)。

私の考え

私は、少ない手数でも深く届くために、まず「届く(送達)」と「場の鎮火」を基盤に置きます。その上で、増殖(細胞周期)移動性(ECM/接着)を押さえ、患者ごとの複合診断で順番・強度を調整する――これが現実的な最短距離だと考えます。次回(Part 8)は、国別の強みから“どこで何が実装しやすいか”を具体的に見ます。

Morningglorysciencesチームによって編集されました。

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し本格的に治療法・治療薬創出に取り組み、成功体験を得る。その後複数のグローバル製薬会社に在籍し、研究・ビジネス、そしてベンチャー創出投資家を米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。アカデミアにて大学院教員の役割も果たす。

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