がん治療薬承認速報 Oncology Drug Approval News Flash:BRCA変異mCRPCに対するルカパリブ本承認とアミバンタマブ皮下注製剤のFDA承認

FDA承認の概要

2025年12月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、ルカパリブ(rucaparib, Rubraca, pharmaand GmbH)について、以下の適応に対する本承認(regular approval)を行いました。

  • 成人の去勢抵抗性前立腺がん(metastatic castration-resistant prostate cancer, mCRPC)のうち、有害またはその疑いのあるBRCA変異(BRCAm, 生殖細胞系列/体細胞を問わず)を有し、
  • アンドロゲン受容体標的薬による治療歴を持つ患者

治療対象患者は、FDA承認コンパニオン診断薬を用いてBRCA変異の有無を確認する必要があります。Rubracaは、同様の適応で2020年に迅速承認(accelerated approval)を取得しており、今回はTRITON3試験の結果をもとに本承認へ移行した形です。

あわせてFDAは、アミバンタマブ+ヒアルロニダーゼ-lpuj(amivantamab and hyaluronidase-lpuj, Rybrevant Faspro, Janssen Biotech, Inc.)の皮下注製剤を承認しました。本製剤は、静注製剤アミバンタマブ(Rybrevant)で既に承認されているすべての成人適応に対して使用可能とされており、適応の詳細は静注製剤の添付文書に準じます。


TRITON3試験(NCT02975934)の概要

ルカパリブの本承認は、TRITON3試験(NCT02975934)の結果に基づいています。本試験は、2020年の迅速承認に対する臨床的ベネフィットの検証を目的としたランダム化オープンラベル試験です。

  • 対象患者:mCRPC 405例
    • BRCAm:302例
    • ATMm:103例
  • 主な組み入れ条件:
    • ARシグナル経路阻害薬(ARPI:エンザルタミド、アビラテロンなど)による治療後に病勢進行
    • 去勢抵抗性の病期で化学療法歴なし(docetaxelなどの前治療なし)
    • アンドロゲン除去療法(ADT)あるいは外科的去勢により、去勢レベルのテストステロン値を維持
  • 試験デザイン:2:1の比率で以下にランダム化
    • ルカパリブ群
    • 医師選択治療群(未使用のARPI〔エンザルタミドまたはアビラテロン酢酸エステル〕、またはドセタキセル)
  • 層別因子:Performance Status、肝転移の有無、変異タイプ(BRCA1m、BRCA2m、ATMm)

主要有効性評価項目は、BRCAm集団および全体集団における放射線学的無増悪生存期間(radiographic progression-free survival, rPFS:独立放射線学的レビューによる評価)であり、全生存期間(overall survival, OS)が追加の有効性評価項目として設定されました。


TRITON3の有効性結果:BRCAm集団で明確なrPFSベネフィット

TRITON3では、ルカパリブはBRCAm集団および全体集団において医師選択治療と比較してrPFSを有意に改善しました。特にBRCAm集団で顕著なベネフィットが認められています。

  • BRCAm集団(n = 302)におけるrPFS:
    • ルカパリブ群:中央値 11.2か月(95% CI:9.2, 13.8)
    • 医師選択治療群:中央値 6.4か月(95% CI:5.4, 8.3)
    • ハザード比(HR):0.50(95% CI:0.36, 0.69)、p < 0.0001
  • BRCAm集団のOS:
    • ルカパリブ群:中央値 23.2か月(95% CI:19.1, 25.2)
    • 医師選択治療群:中央値 21.2か月(95% CI:18.0, 23.1)
    • HR:0.91(95% CI:0.68, 1.20)、統計学的有意差なし
  • ATMm集団(n = 103)の探索的解析:
    • rPFS HR:0.95(95% CI:0.59, 1.52)
    • OS HR:1.21(95% CI:0.77, 1.90)
    • → 全体としてのベネフィットは主にBRCAm症例の結果に起因することが示唆されました。

ルカパリブの安全性・用法用量

Rubracaの添付文書には、以下の警告・注意事項が記載されています。

  • 骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病(MDS/AML)
  • 胎児毒性(embryo-fetal toxicity)

推奨用量:

  • ルカパリブ 600 mg(300 mg錠 × 2錠)を1日2回経口投与
  • 食事の有無を問わず服用可能
  • 病勢進行または許容できない毒性が発現するまで継続

今回の申請審査では、申請者が任意提出するAssessment Aid(AA)が活用されており、FDAは目標審査期限より1か月早く承認を行っています。


PALOMA-3試験とアミバンタマブ皮下注製剤(Rybrevant Faspro)

アミバンタマブ+ヒアルロニダーゼ-lpuj皮下注製剤は、PALOMA-3試験の結果に基づき承認されました。

  • 対象:EGFR Exon 19欠失またはExon 21 L858R変異を有する局所進行または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)成人患者
  • 試験デザイン:ランダム化オープンラベル、多施設、多地域試験
  • 症例数:418例(1:1ランダム化)
    • 皮下注アミバンタマブ+ヒアルロニダーゼ-lpuj+ラゼルチニブ群
    • 静注アミバンタマブ+ラゼルチニブ群

主要評価項目は薬物動態(PK)指標であるトラフ濃度(Ctrough)およびAUC(Area Under the Curve)で、追加の記述的評価として奏効率(ORR)、PFS、OSが設定されました。

  • 2週ごと投与スケジュール:
    • Cycle 2 AUCDay 1–Day 15 の幾何平均比(GMR, 90% CI):1.03(0.98, 1.09)
    • Cycle 4 Day 1 におけるCtrough のGMR(90% CI):1.43(1.27, 1.61)
  • 3週ごと投与スケジュール(シミュレーション):
    • Cycle 2 Day 1–Day 21平均濃度のGMR(90% CI):1.20(1.15, 1.26)
    • 定常状態Ctrough のGMR(90% CI):1.32(1.23, 1.42)
    • いずれも事前に規定された閾値0.8を下回らず、PKの比較可能性が示されました。

ORRやPFSの記述的解析では、皮下注群と静注群の間で大きな差はみられず、OSに不利益な影響を示唆する所見も認められていません。


皮下注アミバンタマブの安全性・投与法

PALOMA-3において、皮下注と静注の安全性プロファイルは概ね類似していましたが、以下の点に違いが認められました。

  • 全身性投与関連反応(administration-related reactions, ARRs)の発現率:
    • 皮下注アミバンタマブ:13%
    • 静注アミバンタマブの輸注関連反応(IRRs):66%
    → 皮下注製剤の方が全身反応の頻度は明らかに低い結果でした。

添付文書の警告・注意事項としては、以下が挙げられています。

  • 過敏症および投与関連反応
  • 間質性肺疾患/肺炎
  • ラゼルチニブ併用時の静脈血栓塞栓症
  • 皮膚毒性
  • 眼毒性
  • 胎児毒性

皮下注アミバンタマブの推奨用量は、ベースライン体重および適応に基づき決定されます(詳細は添付文書に記載)。

本承認は、FDA Oncology Center of Excellenceが主導する国際共同審査枠組み「Project Orbis」の一環として実施され、オーストラリアTGAおよびカナダ保健省と協働して審査が行われました。申請審査では、Assessment Aidも活用されています。


Morningglorysciences 編集部コメント

今回の2つの承認は、いずれも「既存標準治療に対する上乗せではなく、治療オプションの精緻化と利便性向上」という点で共通した特徴があります。

ルカパリブについては、TRITON3によりBRCAm mCRPCにおけるrPFSベネフィットが明確に示され、本承認へ移行しました。一方でATMmでは有意なベネフィットが認められておらず、PARP阻害薬の恩恵はBRCA変異、特にBRCA2変異に強く依存するというこれまでの知見を再確認する結果となりました。mCSPC領域ではニラパリブ+アビラテロン併用などの強化療法も登場しており、「いつPARP阻害薬を使うか」という治療シーケンス設計が今後の重要テーマになります。

アミバンタマブ皮下注製剤については、有効性と薬物動態の同等性を担保しつつ、投与反応の頻度を大きく低減できるという点が臨床現場にとって大きな意味を持ちます。EGFR変異陽性NSCLCに対する抗体薬治療は、長期にわたる継続投与が前提となるため、患者の通院負担や点滴椅子の占有時間、看護師の負荷といったリソース面の課題が常につきまといます。皮下注製剤の選択肢が広がることで、治療の受けやすさと医療提供体制の効率化の両立が期待されます。

今後は、

  • BRCA以外のDNA修復遺伝子変異に対するルカパリブの位置づけ(真のバイオマーカーはどこまで拡張できるか)
  • mCSPC段階でのPARP阻害薬使用が、mCRPC移行後の治療オプションや耐性パターンに与える影響
  • アミバンタマブ皮下注製剤のリアルワールドでの使用実態(投与時間短縮、反応頻度、患者満足度、コストなど)

といった視点からのデータ蓄積が、今後の治療戦略を組み立てるうえで重要になると考えられます。

※本記事はAACR “FDA Approval Alert”およびFDA公表資料を基に、Morningglorysciencesが独自に要約・整理したものです。

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し本格的に治療法・治療薬創出に取り組み、成功体験を得る。その後複数のグローバル製薬会社に在籍し、研究・ビジネス、そしてベンチャー創出投資家を米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。アカデミアにて大学院教員の役割も果たす。

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