Part 1では、NK細胞が免疫チェックポイント阻害剤(ICB)治療に対する抵抗性に寄与する仕組みを整理しました。後編となる本記事(Part 2)では、臨床的な含意と治療戦略、そして今後の展望を解説します。
臨床的含意
複数の研究から、腫瘍内のNK細胞量が多いほどICB治療効果が低い傾向が示されました。これは「NK細胞=善玉」という従来の理解を覆すものであり、臨床試験や治療設計において考慮すべき重要な要素です。
NK細胞抑制メカニズムの整理
- サイトカイン競合(IL-2、IL-15の消費)
- CD8+ T細胞の分化抑制と消耗化促進
- ケモカイン経路を介したT細胞浸潤阻害(CX3CR1)
- 免疫抑制性因子(TGF-βなど)の誘導
治療戦略の可能性
これらの知見に基づき、以下の治療戦略が提案されています。
- 抑制的NK細胞の除去:抗CD38抗体や抗NK1.1抗体を用いて腫瘍内のNK細胞を選択的に排除する。
- NK細胞のリプログラミング:腫瘍内で免疫抑制的に変容したNK細胞を「抗腫瘍型」に再誘導する。
- 経路阻害:CX3CR1経路阻害剤とICBを併用することでT細胞浸潤を改善する。
今後の展望
NK細胞を標的とする戦略は大きく二つの方向性に分かれます。
- 抑制的NK細胞の排除:ICB効果を妨げるサブセットを除去し、T細胞免疫を回復させる。
- 抗腫瘍NK細胞の強化:腫瘍殺傷能を高め、直接的に腫瘍細胞を排除させる。
両者は相反する戦略のように見えますが、実際には「NK細胞の多様性」を踏まえた統合的アプローチが必要とされます。
私の考察
NK細胞は単純な「善玉」でも「悪玉」でもなく、腫瘍免疫において極めて複雑な役割を果たしています。今後の創薬や臨床開発では、サブセット特異的標的化と組み合わせ療法が成功の鍵を握ると考えます。特に、ICB+NK細胞制御戦略は、がん免疫治療の次のブレイクスルーにつながる可能性があります。
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この記事はMorningglorysciencesチームによって編集されました。
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