2025年11月21日、米国FDAは、シスプラチン不適格の筋層浸潤性膀胱がん(muscle invasive bladder cancer, MIBC)成人患者を対象に、
ペムブロリズマブ(Keytruda / Keytruda Qlex)とエンホルツマブ ベドチン-ejfv(Padcev)の併用による「術前(ネオアジュバント)+術後(アジュバント)」周術期療法を承認しました。
対象は、
- ラジカル膀胱全摘+骨盤リンパ節郭清(RC+PLND)の適応がある
- ただしシスプラチンベース化学療法が「不適格」または「拒否」のMIBC患者
です。
臨床試験:KEYNOTE-905/EV-303 の概要
本承認は、KEYNOTE-905/EV-303試験(NCT03924895)の結果に基づいています。
- 試験デザイン
- オープンラベル、ランダム化、多施設、アクティブコントロール試験
- 未治療のMIBC患者344例
- 全例、RC+PLNDの候補だが、シスプラチンが使えない/使わない患者
- ランダム化群
- ペムブロリズマブ+エンホルツマブ ベドチン併用
- ネオアジュバント(術前)投与 → RC+PLND →
アジュバント(術後)で同併用+その後ペムブロリズマブ単剤
- ネオアジュバント(術前)投与 → RC+PLND →
- コントロール群:RC+PLND単独(周術期全身療法なし)
- ペムブロリズマブ+エンホルツマブ ベドチン併用
- 主要評価項目
- イベントフリー生存期間(EFS:盲検独立中央判定)
- 主要な副次評価項目
- 全生存期間(OS)
主要結果:EFS・OSともに有意な改善
試験では、周術期ペムブロリズマブ+エンホルツマブ ベドチン群で、手術単独群に比べてEFSとOSの双方で統計学的に有意な改善が認められました。
- イベントフリー生存(EFS)
- 併用群:中央値 未到達(NR)(95% CI: 37.3, NR)
- 手術単独群:中央値 15.7か月(95% CI: 10.3, 20.5)
- ハザード比(HR) 0.40(95% CI: 0.28, 0.57), p < 0.0001
- 全生存(OS)
- 併用群:中央値 NR(95% CI: NR, NR)
- 手術単独群:中央値 41.7か月(95% CI: 31.8, NR)
- HR 0.50(95% CI: 0.33, 0.74), p = 0.0002
安全性と主な有害事象
安全性プロファイルは、これまで進行/転移性尿路上皮がんで報告されている
ペムブロリズマブ+エンホルツマブ ベドチン併用の知見と概ね一貫していました。
- ペムブロリズマブ
- 免疫関連有害事象(肺炎、肝障害、内分泌障害、皮膚障害など)
- インフュージョンリアクション
- 造血幹細胞移植後合併症
- 胎児への影響 など
- エンホルツマブ ベドチン-ejfv
- 皮膚障害(重度の皮膚反応を含む)
- 高血糖
- 間質性肺疾患/肺炎
- 末梢神経障害
- 眼障害
- 点滴外漏出
- 胎児への影響 など
詳細な禁忌・警告・モニタリング項目は、最新の製品添付文書を必ず参照する必要があります。
用法・用量(周術期レジメンの概要)
承認時点での周術期レジメンは以下のように整理されています。
- ネオアジュバント(術前)
- ペムブロリズマブ:200 mg IV、3週毎
- エンホルツマブ ベドチン-ejfv:1.25 mg/kg(最大125 mg)IV、21日サイクルのDay 1・8
- 合計3サイクル(約9週間)
- アジュバント(術後)
- エンホルツマブ ベドチン-ejfv:同用量を3週毎で追加6サイクル
- ペムブロリズマブ:
- 200 mg IVを3週毎で計14サイクル、または
- 400 mg IVを6週毎で計7サイクル
- 併用期間は約18週間、その後ペムブロリズマブ単剤を含めた
周術期アジュバント全体は約42週間 - 同一日に投与する場合は、エンホルツマブ ベドチン投与後にペムブロリズマブを投与
Keytruda Qlex(ペムブロリズマブ+berahyaluronidase alfa-pmph)併用時の詳細は、同製剤の添付文書に準拠します。
規制面でのポイント:Project Orbis と優先審査
本承認審査は、FDA Oncology Center of Excellence の「Project Orbis」の枠組みで行われ、
オーストラリアTGA、カナダHC、スイスSwissmedic、英国MHRAと並行して審査が進められました。
また、本申請は優先審査(priority review)として扱われ、PDUFA目標期日より約5か月前倒しで承認されています。
Morningglorysciences 編集部コメント
シスプラチン不適格のMIBCは、これまで「標準的な周術期全身療法に乗せにくい」領域でした。
今回、免疫チェックポイント阻害薬+抗体薬物複合体の併用が、手術単独に対してEFSとOSの両方で明確なベネフィットを示したことで、
シスプラチン不適格例の周術期戦略は今後大きく変わる可能性があります。
一方で、皮膚毒性や高血糖、末梢神経障害など、エンホルツマブ ベドチンに起因する有害事象への対応、
長期にわたる周術期レジメンの負担、医療コストとアクセス面といった課題も残されます。
実臨床では、患者背景(高齢、合併症、パフォーマンスステータス)を踏まえ、
「術前・術後のどこまでを標準とするか」を各国・各施設で慎重に検討していくフェーズに入ると考えられます。
※本記事はAACR “FDA Approval Alert” およびFDA公表資料を基に、Morningglorysciencesが独自に要約・整理したものです。
治療方針の決定にあたっては、必ず原著論文・最新の添付文書・各国ガイドラインをご参照ください。

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