がん治療薬承認速報 Oncology Drug Approval News Flash:自家移植非適格の新規多発性骨髄腫に対するダラツムマブ皮下注製剤+ボルテゾミブ/レナリドミド/デキサメタゾン(VRd)併用療法がFDA承認

FDA承認の概要

2026年1月27日、米国食品医薬品局(FDA)は、ダラツムマブおよびヒアルロニダーゼ-fihj配合皮下注製剤(daratumumab and hyaluronidase-fihj, Darzalex Faspro, Janssen Biotech, Inc.)を、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン(VRd)との併用で投与するレジメンを承認しました。

適応は、自家造血幹細胞移植(autologous stem cell transplant, ASCT)の非適格と判断された、新規診断の成人多発性骨髄腫患者です。

なお、本レジメンにおける有効性は、初期治療としてASCTを拒否した患者に対しては確立されていません。


CEPHEUS試験(NCT03652064)の概要

本承認は、CEPHEUS試験(NCT03652064)の結果に基づいています。

  • 試験デザイン:オープンラベル、ランダム化、実薬対照試験
  • 対象:新規診断多発性骨髄腫でASCT非適格、または初回治療としてASCTを拒否した成人患者
  • 登録症例数:395例
    • Darzalex Faspro+VRd群:197例
    • VRd単独群:198例
  • レジメン:
    • 試験群:ダラツムマブ皮下注+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-VRd)
    • 対照群:VRd

主要評価項目は以下の2つです。

  • 全体の微小残存病変(minimal residual disease, MRD)陰性率
  • 国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)基準に基づく独立評価委員会(IRC)判定の無増悪生存期間(progression-free survival, PFS)

主な有効性結果:MRD陰性率とPFSの改善

MRD陰性率:

  • D-VRd群:52.3%
  • VRd群:34.8%
  • p値:0.0005

PFS:

  • PFSハザード比(HR):0.60(95%信頼区間[CI]:0.41, 0.88)
  • p値:0.0078

MRD陰性率の向上とPFSの改善により、Darzalex Fasproを加えた四剤併用レジメンが、VRd単独と比較して疾患コントロールを強化することが示されました。


安全性と主な注意事項

Darzalex Fasproの添付文書には、以下の警告・注意事項が含まれています。

  • 過敏症およびその他の投与関連反応
  • 感染症
  • 好中球減少症(neutropenia)
  • 血小板減少症(thrombocytopenia)
  • 胎児毒性(embryo-fetal toxicity)
  • クロスマッチおよび赤血球抗体スクリーニングへの干渉
  • 軽鎖アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)患者における心毒性

輸血前のクロスマッチや抗体スクリーニングに影響を及ぼす可能性があるため、血液内科と輸血部門の連携が重要です。また、高齢者や併存疾患の多いASCT非適格患者では、感染や血球減少への対応体制も含めた包括的なリスク管理が求められます。


用法・用量

推奨Darzalex Faspro用量:

  • 1,800 mg/30,000単位
    • ダラツムマブ 1,800 mg + ヒアルロニダーゼ 30,000単位

他薬剤(ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン)の用量およびスケジュールについては、それぞれの製品情報およびレジメン推奨に従います。

本審査では、申請者が任意提出するAssessment Aidが用いられ、FDAによる評価の効率化が図られました。


Morningglorysciences 編集部コメント

自家移植非適格の新規多発性骨髄腫において、VRdは長らく標準治療のひとつとして位置づけられてきました。今回、ダラツムマブ皮下注製剤を上乗せしたD-VRdが、MRD陰性率とPFSの双方でVRdを上回ったことで、「移植非適格高齢者の一次治療を、より深い奏効と長期コントロールを目指して強化する」戦略が現実味を帯びてきたと言えます。

一方で、

  • 四剤併用に伴う血球毒性や感染リスクの増加
  • 投与スケジュールの複雑化と外来通院負担
  • 医療費やリソース(診療時間・看護負荷)の増大

といった現実的な課題も無視できません。特に高齢・フレイルな患者では、強化療法のベネフィットと有害事象リスクを丁寧に評価し、「どこまで深さを追いに行くのか」を患者・家族と共有しながら治療方針を決めることが重要になります。

今後は、

  • 年齢・併存疾患・脆弱性(frailty)スコア別のベネフィットと毒性プロファイル
  • 治療強度を落としたレジメン(減量・早期治療中止など)のリアルワールドデータ
  • 他の抗CD38抗体併用レジメンやセルラーセラピーとのシーケンス戦略

といった観点からの検証が、日常臨床での最適な位置づけを決めていくうえで鍵になると考えられます。

※本記事はAACR “FDA Approval Alert”およびFDA公表資料を基に、Morningglorysciencesが独自に要約・整理したものです。

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し本格的に治療法・治療薬創出に取り組み、成功体験を得る。その後複数のグローバル製薬会社に在籍し、研究・ビジネス、そしてベンチャー創出投資家を米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。アカデミアにて大学院教員の役割も果たす。

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