FDA承認の概要
2026年2月24日、米国食品医薬品局(FDA)は、エンコラフェニブ(encorafenib, Braftovi, Array BioPharma Inc./Pfizer)をセツキシマブおよびフルオロウラシル(5-FU)ベース化学療法と併用するレジメンについて、以下の適応で通常承認(traditional approval)を付与しました。
- 成人のBRAF V600E変異陽性転移性大腸がん(metastatic colorectal cancer, mCRC)
- FDA承認コンパニオン診断(Qiagen「therascreen BRAF V600E RGQ PCR Kit」)によりBRAF V600E変異が確認された症例
エンコラフェニブは、すでに2024年にセツキシマブ+mFOLFOX6併用による加速承認を取得しており、今回、BREAKWATER試験の結果に基づいて初回治療ラインでの通常承認へ移行・拡張された位置づけになります。
BREAKWATER試験(NCT04607421)の概要
有効性は、BREAKWATER試験(NCT04607421)の成績に基づいて評価されました。
- 試験デザイン:多施設、ランダム化、オープンラベル、実薬対照、第3相試験
- 対象:初回治療ライン(treatment-naïve)のBRAF V600E変異陽性転移性大腸がん
- コンパニオン診断:Qiagen「therascreen BRAF V600E RGQ PCR Kit」でBRAF V600Eを確認
試験は複数の腕を持つ構造で開始され、その後プロトコール改訂を経ています。
第3相パート:Arm B vs Arm C
- Arm B(治験群):エンコラフェニブ(1日1回経口)+セツキシマブ(2週ごと静注)+mFOLFOX6(2週ごと)
- Arm C(対照群):標準化学療法
- mFOLFOX6またはFOLFOXIRI(いずれも2週ごと)、あるいはCAPOX(3週ごと)
- 各レジメンはベバシズマブ併用または非併用
- ランダム化:Arm B 236例、Arm C 243例
主要評価項目は、全ランダム化症例における無増悪生存期間(progression-free survival, PFS)と、各腕で最初に登録された110例を対象とした客観的奏効率(objective response rate, ORR)(いずれもBICR評価)であり、全生存期間(overall survival, OS)も形式的に検定されました。
Cohort 3:FOLFIRIバックボーン
- Arm D(治験群):エンコラフェニブ+セツキシマブ+FOLFIRI(2週ごと)
- Arm E(対照群):FOLFIRI ± ベバシズマブ(2週ごと)
- 主要評価項目:BICR評価によるORR
主な有効性結果
第3相パート(Arm B vs Arm C)
- PFS(全ランダム化集団):
- Arm B:中央値 12.8か月(95% CI:11.2, 15.9)
- Arm C:中央値 7.1か月(95% CI:6.8, 8.5)
- ハザード比(HR):0.53(95% CI:0.41, 0.68)、p < 0.0001
- OS(全ランダム化集団):
- Arm B:中央値 30.3か月(95% CI:21.7, 上限未到達)
- Arm C:中央値 15.1か月(95% CI:13.7, 17.7)
- HR:0.49(95% CI:0.38, 0.63)、p < 0.0001
- ORR(各腕最初の110例):
- Arm B:61%(95% CI:52%, 70%)
- Arm C:40%(95% CI:31%, 49%)
- p = 0.0008
Cohort 3(Arm D vs Arm E)
- ORR:
- Arm D:64%(95% CI:53, 74)
- Arm E:39%(95% CI:29, 51)
- p = 0.0011
いずれの比較においても、エンコラフェニブ併用群は標準化学療法群に対し、PFS・OS・ORRのすべてで臨床的かつ統計学的に有意な改善を示しました。
安全性プロファイルと主な注意事項
エンコラフェニブの添付文書には、以下の警告・注意事項が記載されています。
- 新規悪性腫瘍(皮膚および非皮膚)
- BRAF野生型腫瘍における腫瘍促進リスク
- 心筋症(cardiomyopathy)
- 肝毒性(hepatotoxicity)
- 出血(hemorrhage)
- ぶどう膜炎(uveitis)
- QT延長
- 胎児毒性(embryo-fetal toxicity)
BRAF阻害薬に特徴的な皮膚腫瘍リスクや、BRAF野生型腫瘍での腫瘍促進の可能性については、消化管内外の二次腫瘍スクリーニングや慎重な患者選択が重要となります。
用法・用量
推奨エンコラフェニブ用量:
- 300 mg(75 mgカプセル4カプセル)を1日1回経口投与
- 併用:
- セツキシマブ+mFOLFOX6、または
- セツキシマブ+FOLFIRI
- 病勢進行または許容できない毒性が発現するまで継続
セツキシマブおよびmFOLFOX6/FOLFIRIの用量・スケジュールは、それぞれの標準的な投与法に準拠します。
規制上の位置づけ:Project FrontRunner/Project Orbis/RTOR
- 本申請は、Oncology Center of ExcellenceのProject FrontRunnerの一例として位置づけられており、より早期の治療ラインにおいて有望な治療オプションへのアクセスを拡大することを目的としています。:contentReference[oaicite:9]{index=9}
- また、Project Orbisの枠組みのもとで審査され、今回のレビューではHealth Canadaと協働が行われました。
- Real-Time Oncology Review(RTOR)パイロットプログラムが活用され、申請書全体の提出前に主要データが事前に審査されました。
- 申請者が任意提出するAssessment Aidも用いられ、FDAによる評価の効率化が図られています。
Morningglorysciences 編集部コメント
BRAF V600E変異陽性の転移性大腸がんは、従来から予後不良サブセットとして知られ、標準的なFOLFOX/FOLFIRIベース治療に対しても奏効率・PFS・OSが一様に低いことが課題でした。すでに二次治療以降ではBRAF+EGFR阻害薬併用が確立されつつありますが、初回治療ラインにおける最適戦略は模索段階にありました。
BREAKWATER試験の結果は、「BRAF V600E陽性mCRCに対する初回治療として、化学療法バックボーンにエンコラフェニブ+セツキシマブを上乗せする」コンセプトが、PFS・OSの双方で明確なベネフィットをもたらすことを示しています。特に、OS中央値が30か月を超えたという点は、このサブセットの歴史的な成績を踏まえると大きな意味を持ちます。
一方で、実臨床で考慮すべきポイントも多く存在します。
- 化学療法バックボーン:mFOLFOX6とFOLFIRIのどちらを選択するか、患者背景(年齢・PS・転移臓器)による使い分け
- 毒性プロファイル:BRAF阻害薬/EGFR抗体/5-FU系化学療法の毒性が重なる中で、皮膚障害・下痢・疲労・心毒性などをどうマネジするか
- 治療シーケンス:初回治療で強い分子標的併用を行った後、二次治療以降のオプションをどう構築するか
今後は、RASステータスや腫瘍局在(右側/左側)、肝限定転移かどうかなど、臨床的・分子生物学的サブグループ別のベネフィット解析が、より精緻な患者選択に役立つと考えられます。
※本記事はAACR “FDA Approval Alert”およびFDA公表資料を基に、Morningglorysciencesが独自に要約・整理したものです。

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