最新科学ニュース– category –
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呼吸器ウイルス感染は乳がんの転移リスクをどう変えるのか:最新知見と現実的な向き合い方
乳がんは寛解後も、体内のどこかに「休眠」状態のがん細胞(DCC: disseminated cancer cells)が潜み、年単位で再増殖(覚醒)して転移を起こすことがあります。近年、インフルエンザやSARS-CoV-2(新型コロナ)などの呼吸器ウイルス感染が、肺に潜む乳が... -
最新科学ニュース:cPLA2が作る「G2特異的ストレス顆粒」が化学療法耐性を左右する:PDACで見えた新しい脆弱性
膵管腺がん(PDAC)を中心に、がん細胞集団の中でストレス顆粒(Stress Granules; SG)の量と質に大きな細胞間ヘテロ性が存在し、なかでもG2期細胞でSGが突出して増えること、そしてその駆動役がcPLA2 → 15d-PGJ2経路であることが明らかになりました。本稿... -
ニュース解説|蛍光タンパク質が「量子スピン量子ビット」に—生命科学に広がる新しい量子センシング
論文:A fluorescent-protein spin qubit(Nature, 2025年9月4日) 要旨(3行で) 遺伝子導入できる蛍光タンパク質(EYFP)が、光で初期化・読み出し・制御できるスピン量子ビットとして実証されました。 液体窒素温度で約16 μsのコヒーレンス(CPMG下)と... -
News Watch|低酸素×腎:tRNA由来スモールRNAが「RNAオートファジー」で腎を守る
リード:腎は低酸素に陥りやすく、AKIやCKDの悪循環の起点になります。最新のScience 2025論文は、低酸素で誘導される「tRNA-Asp-GTC-3′tDR」という小分子RNAが、RNAオートファジーを駆動し腎細胞を保護する仕組みを提示しました。従来のHIF/代謝リプログ... -
がんと老化促進:分子細胞レベルから読み解く最新知見
近年、「がん」と「老化」は別々に研究される対象ではなく、深く結びついた現象として理解されつつあります。がん患者で観察される免疫低下や慢性炎症は、単に治療の副作用だけでなく、腫瘍そのものが宿主の細胞や組織に「老化」を促す可能性があるのです... -
News Watch:EV × 神経系 × がん免疫の最前線――腫瘍由来sEVが感覚神経を再プログラムし、免疫抑制を駆動する(IL-6/IL-6R軸と適応拡大の可能性まで)後編
IL-6R阻害薬と企業マップ(2025年8月時点) 本稿のIL-6/IL-6R軸に関する考察を踏まえ、「誰がIL-6R阻害薬を保有し、何に使われているか」を整理します。将来的な適応拡大/腫瘍免疫との併用を想定するうえで、パートナー候補や**供給力(原薬・製剤・皮下... -
News Watch:EV × 神経系 × がん免疫の最前線――腫瘍由来sEVが感覚神経を再プログラムし、免疫抑制を駆動する(IL-6/IL-6R軸と適応拡大の可能性まで)前編
腫瘍が放出する小型エクソソーム/小胞(small extracellular vesicles; sEV)がTRPV1陽性の痛覚感受性ニューロン(nociceptor)を腫瘍へ呼び込み、IL-6やSubstance Pなどの分泌プロファイルを変化させ、MDSCの動員↑/CD8 T細胞の疲弊↑という免疫抑制ループ... -
最新科学ニュース: がん・肥満・老化の交点 ― 体重減少がもたらす免疫回復の新知見
最新の研究によって、老化と肥満がそれぞれ独立に、そして相乗的にがん進行を促進することが示されました。一方で、体重減少が免疫環境を回復させ、腫瘍の進行を抑制できる可能性も浮かび上がっています。本記事では、この論文を軸に、がん・肥満・老化の... -
p53–MDM2軸が守る血液脳関門(BBB)と血液網膜関門(BRB):老化・遺伝的脆弱性・がん脳転移リスクまで徹底解説
はじめに 脳や網膜を守る血液–脳関門(BBB)および血液–網膜関門(BRB)は、神経系の恒常性を保つために欠かせない重要な構造です。これらの関門は、外部からの有害物質や免疫細胞の侵入を制限しつつ、必要な栄養やホルモンを選択的に通過させるという精密... -
タンパク質は「もっと安定」だった:メガスケール実験と解釈可能モデルが更新する設計ルール
構造が分かっても折り畳み安定性(ΔG)は見えにくい——この古いギャップが、メガスケール実験と「加法的エネルギーモデル+疎な二体結合」の再検証で急速に埋まりつつあります。本稿は、最新の実験・理論を学生〜研究者レベルでやさしく接続し、ドラッグデ... -
🧬インスリン抵抗性と糖尿病を“個別化分子地図”から読み解く──プロテオーム・ゲノミクスの最前線
「なぜ同じ食事・生活習慣でも糖尿病になる人とならない人がいるのか?」この疑問に対し、最新の科学はプロテオーム(全タンパク質解析)とゲノミクスを使って“分子地図”を描きはじめています。本記事では、Cell誌(2025年7月号)に掲載された画期的な研究... -
【科学と責任】“ヒ素生命”論文、15年越しの撤回——何が起きたのか?
■ はじめに 2025年7月、世界的な科学雑誌『Science』は、2010年に発表された論文「リンの代わりにヒ素を利用して成長する細菌」に対して撤回を決定しました。この論文はかつてNASAが記者会見で発表し、ヒ素を利用する未知の生命体の可能性を示唆したことで... -
【Science News】Cancer Discovery Perspective掲載:p53変異の腫瘍抑制機能を小分子で回復する新アプローチ
2025年6月号のCancer Discovery誌に掲載された最新研究で、小分子化合物を用いてp53変異タンパク質の腫瘍抑制機能を回復させる新戦略が報告されました。本研究は同号のPerspectiveでも特集され、注目を集めています。 p53は多くのがん種で最も高頻度に変異... -
【Science News】Cell Leading Edge掲載:細胞休眠(quiescence)出入りを制御する転写リモデリングの新知見
2025年6月号のCell誌に掲載された最新研究により、細胞が休眠状態(quiescence)に入る過程と、再び増殖を再開する過程を統合的に制御する転写プログラムが明らかとなりました。本論文はCellの注目特集であるLeading Edgeにも選出されています。 研究チー... -
【Science News】Cancer Discovery Spotlight掲載:CAFがNK細胞を抑制し乳がん転移を促進する新機序
2025年6月号のCancer Discovery誌に掲載された最新研究で、がん関連線維芽細胞(CAF)が乳がんの転移形成を促進する新たな免疫抑制メカニズムが明らかとなりました。本研究は同号のSpotlightにも選出されています。 研究チームは、高齢化やBRCA遺伝子変異... -
【Science News】KRAS阻害と免疫依存性:膵臓がん治療における免疫系の役割を解明(Cancer Discovery要約/ひとこと付)
2025年6月にCancer Discovery誌オンライン版に掲載された最新研究により、KRAS G12D阻害薬による膵臓がん(PDAC)治療において、**T細胞依存性の腫瘍退縮メカニズム** が重要な役割を果たすことが示されました。 膵がんではKRAS G12D変異が主要ドライバー... -
【Science News】食道扁平上皮がん発症における高変異細胞の長期潜伏メカニズムを解明:Cancer Discovery要約(ひとこと付)
2025年6月号のCancer Discovery誌に掲載された最新研究により、食道扁平上皮がん(ESCC)の発症過程において、多数のドライバー変異を獲得した高変異細胞が長期間にわたり潜伏状態(休眠)を維持し、その後にがん化へ移行する仕組みが明らかになりました。... -
【Science News】Natureハイライト選出:小分子でミトコンドリアDNAポリメラーゼ活性を回復する新手法
2025年6月12日号のNatureに掲載された最新研究で、POLG遺伝子変異による重篤なミトコンドリア疾患に対して、小分子化合物PZL-AがDNAポリメラーゼγ(POLγ)の機能を直接回復させることが報告されました。本研究はNature Highlightsにも選出されています。 P... -
【Science News】C9orf72変異による核膜孔複合体異常がALS・FTD発症に関与:Nature論文要約(マイキャッチ付)
米国の研究チームが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)の主要な原因遺伝子であるC9orf72遺伝子反復配列異常が、神経細胞の核膜孔複合体(nuclear pore complex: NPC)の機能障害を引き起こすことをマウスモデルで解明しました。C9o...
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