シリーズ:がん悪液質を読み解く — 超入門から最前線まで|第2部

見逃さない!家庭&外来チェックリストとFAQ

第2部は“実践テンプレ集”。家庭での2週間観察と、受診時に役立つ外来チェックを、コピペで使える形にまとめました。家族・患者さん・医療者が同じフォーマットで記録できるようにしています。

目次

はじめに:2週間の“流れ”を見る

悪液質は「昨日・今日」ではなく、2週間の変化を捉えるのがコツ。第1部で触れたとおり、体重だけでは不十分で、食事量・活動度・機能(立ち上がり・階段・握力相当)を一緒に追います。

1) 家庭用|2週間観察テンプレ(1日1行・所要1分)

記入例(コピペしてメモ等に):

【日付】/【体重(kg)】/【食事量(%)】/【主食/主菜/副菜メモ】/【活動(歩数or外出回数)】/【立ち上がり10回の辛さ(0-10)】/【階段の辛さ(0-10)】/【気分(🙂|😐|🙁)】/【困りごと】

※「食事量(%)」は普段=100%、半分=50%などの感覚値でOK。活動は歩数が難しければ「近所へ外出◯回」で十分。

  • 週1回だけ追加測定:ふくらはぎ周り(最大周径)、むくみ(足背圧痕の有無)。
  • 写真メモ:食事の写真を1日1枚。全体量の変化が視覚で掴めます。

2) 家庭用|“注意サイン”早見表(2週間の振り返り)

  • 体重:2週間で▲1.0kg以上(衣服・時間帯差を考慮しても下降傾向)
  • 食事:主食・主菜の摂取が50%未満の日が連続3日以上
  • 機能:立ち上がり10回の辛さが+2以上悪化、または階段がフロア分増えただけで強い息切れ
  • 活動:外出・家事が明らかに減る、日中の仮眠が増える
  • 症状:吐き気・味覚/嗅覚変化・口内炎・便秘/下痢・痛み・発熱・むくみ

いずれかに該当したら、次の受診を待たずに早めに主治医へ。電話やオンラインの相談でも可。

3) 家庭用|“今日から”できる小さな対処

  1. 少量頻回:3食+間食2回に分け、主菜(たんぱく源)を必ず含める。
  2. 味覚対策:冷製・酸味・香り(レモン、ハーブ)で食べやすさを上げる。
  3. ミニ・レジスタンス:椅子からの立ち座り10回×2、かかと上げ20回×2(痛み・息切れが強い日は休む)。
  4. 水分+電解質:こまめに少量。むくみが強い時は医療者に要相談。

4) 外来用|“持っていくメモ”テンプレ(医療者が助かる書き方)

【2週間の要約】 ・体重:◯◯kg → ◯◯kg(▲◯◯kg) ・食事量:普段=100%に対して平均◯◯% ・機能:立ち上がり10回の辛さ 2 → 5/階段2階で息切れ強い ・活動:外出は週◯回→◯回、家事減少 ・症状:吐き気(+)、口内炎(+)、便秘(−)、下痢(−) 【困りごと】例:主菜が食べにくい、夜間の咳で眠れない 【希望】栄養相談・運動リハの紹介、薬の調整の可否
  • 具体例で:「歩けない」より「階段2階で休憩が必要に」の方が共有しやすい。
  • 写真や記録アプリ:提示できると評価が速い。

5) 医療者向け|外来クイックチェック(所要3–5分)

  1. 2週間トレンド確認:体重・食事・活動・機能の4点を要約で。
  2. 症状トリアージ:吐き気・口内炎・便秘/下痢・疼痛・嗜眠。
  3. 簡易機能:椅子立ち上がり(可能なら)/握力代替として親指-人差し指つまみ評価。
  4. 栄養・運動・支持療法の初手:栄養相談、在宅レジスタンス指示、悪心・疼痛の薬調整。
  5. 次回までの課題:食事写真1枚/日、立ち上がりカウント、体重・活動メモ。

6) よくある質問(FAQ)

Q. 体重は毎日測るべき?

A. はい。同じ時間・同じ条件(起床後など)で。増減よりも傾向に注目します。 Q. 食べられない日が続くときは?

A. 少量頻回+冷製・酸味・香りの工夫を。3日以上続けば医療者へ。点滴や投薬調整が有効な場合があります。 Q. 運動で悪化しませんか?

A. 体調に合わせた軽いレジスタンスは有利に働きます。痛み・息切れが強い日は休む、無理はしない、が原則です。 Q. どの栄養補助食品を選べばいい?

A. 主治医・栄養士に相談を。一般論としてはたんぱく質量飲みやすさ、そして継続しやすい価格が選定基準になります。

私の考察

“家庭1分ログ × 外来3分チェック”の同じフォーマットを回すだけで、医療判断の精度が一段上がります。特に、機能(立ち上がり・階段)の主観スコアは再現性が高く、外来での優先順位付けに役立ちます。重要なのは完璧さより継続性。1日1行の記録が、介入のタイミングを早め、治療継続性を支えます。

次回予告

第3部は「悪液質の“見える化” — CT体組成・機能・PROでタイプを掴む」。画像・機能・患者報告アウトカムを束ねたフェノタイピングの実践へ。

編集:Morningglorysciences

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し本格的に治療法・治療薬創出に取り組み、成功体験を得る。その後複数のグローバル製薬会社に在籍し、研究・ビジネス、そしてベンチャー創出投資家を米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。アカデミアにて大学院教員の役割も果たす。

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