2025年 世界のバイオテック/製薬 10大ニュース(10位〜6位)— 制度・安全性・供給が“勝敗”を決めた年

2025年のバイオテック/製薬業界は、ブレークスルーそのもの以上に、「制度」「安全性」「供給」「価格(償還)」が、イノベーションの価値(=普及・売上・継続)を左右する年でした。研究開発の成否だけでなく、規制運用、製造・流通、支払いモデルが“主戦場”になったとも言えます。

本記事(12/30)は、2025年の10大ニュースのうち「10位〜6位」として、産業を下支えする制度・規制・供給・公衆衛生の地殻変動を整理します。12/31公開の後編(5位〜1位)では、肥満薬・ADC・中国ライセンス・M&Aなど、資本と競争地図を決めた“主役級”ニュースをまとめます。


目次

第10位:EUが「健康バイオテック」を政策パッケージとして前面化(European Biotech Act)

欧州は「研究が強いが、事業化と製造が弱い」という長年の課題に対し、2025年末に向けて投資アクセスとバイオ製造強化を含む政策を明確に打ち出しました。これは、欧州発バイオが“論文で強い”だけでなく、臨床・製造・上市までの勝ち筋を取り戻す狙いです。

何が起きたか

  • 欧州委員会が、医療・ヘルスケア領域のバイオテックを支援するBiotech Actを提案し、資金供給やバイオ製造支援、プロジェクト支援などの枠組みを示しました。

なぜ重要か

  • 欧州は規制・国境・資金の断絶がボトルネックでした。政策パッケージ化により、「資本→臨床→製造」の回転を速める意図が明確になりました。
  • 企業側は、EU市場を“後回し”にせず、初期から治験設計/CMC/供給網をEU前提で組み直す圧力が高まります。

2026年への示唆

  • ポイントは「提案」から「運用」へ。投資ファシリティの実効性、域内臨床のスピード、バイオ製造支援の具体化が次の焦点です。

第9位:遺伝子治療が“転換点”へ—安全性シグナルと規制対応が投資回収を左右

2025年は、遺伝子治療(特にAAV領域)において、期待の高さと同じくらい安全性・長期リスク・適応選別が厳しく問われた年でした。承認や開発継続の可否は、単なる有効性だけでなく、投与量設計、免疫学的管理、長期フォロー、患者層の適正化を含む“運用可能性”で評価されます。

何が起きたか

  • FDAが、特定の遺伝子治療製品について流通停止要請治験ホールドを含む強い対応を取る局面があり、安全性リスクが前面化しました。

なぜ重要か

  • 遺伝子治療は「1回投与・高額」が多く、事故や重篤事象は市場全体の信頼に波及します。投資家・規制当局・医療現場は、“安全性の確率分布”に敏感になりました。
  • 製造の一貫性(CMC)と薬剤の品質管理は、臨床データと同等以上に価値を持ちます。

2026年への示唆

  • 領域は終わらないが、勝者は限られる。「安全性に強い設計」「適応の絞り込み」「免疫管理」「長期データ」が揃う案件が評価されます。

第8位:バイオシミラーが“現実の政策・調達ツール”に—Stelara後の本格競争

2025年は米国で、複数の大型生物製剤に対するバイオシミラー競争が進み、特に調剤・保険設計(PBM/保険者)側の意思決定が市場を強く動かしました。医薬品費の抑制が強まる中、バイオシミラーは「選択肢」から「置換の現実」へ移行しています。

何が起きたか

  • Stelara(ustekinumab)に対するバイオシミラーが米国市場で展開し、大幅ディスカウントを伴う競争が顕在化しました。
  • 保険者・PBMのフォーミュラリ運用が“価格形成そのもの”に直結する構図が、より鮮明になりました。

なぜ重要か

  • 製薬企業は、ライフサイクル(剤形・投与・周辺サービス)を含む防衛戦略が不可欠になります。
  • バイオベンチャーにとっても、将来の大型品は「ピーク売上の前提」が変わり、上市後の競争(価格・償還)を織り込んだ開発が求められます。

2026年への示唆

  • “どの領域が次に置換圧を受けるか”を先読みすることが重要。免疫領域は引き続き競争が激化します。

第7位:米国の薬価・償還が次段階へ—Medicare交渉の拡大と新しい価格シグナル

2025年は米国で、薬価とアクセスの議論が「政治テーマ」から「制度運用」として動きました。Medicareの価格交渉が進むことで、医薬品の価格戦略は“企業内の最適化”では完結しにくくなり、制度側のシグナルを織り込む必要が増しています。

何が起きたか

  • Medicareの薬価交渉において、対象品目や交渉プロセスが進み、2027年に向けた価格形成の枠組みが明確になりました。

なぜ重要か

  • 大手は、特許切れと価格圧力の同時進行に直面します。結果として、売上維持のためのM&Aや提携が合理化されやすくなります(後編につながる重要な下地)。
  • 新薬の価値は「効く」だけでなく、費用対効果・対象患者・継続率を含めて説明責任が重くなります。

2026年への示唆

  • 開発初期からHEOR/リアルワールド(RWE)を前提に“価値証明”を設計する動きが強まります。

第6位:抗菌薬が久々の象徴的前進—新規クラスの登場でAMR(薬剤耐性)に現実解

薬剤耐性(AMR)は「重要だが採算が合いにくい」領域として、長く停滞してきました。2025年は、久々に“新しいクラスの抗菌薬”が臨床・規制の文脈で注目され、感染症領域のモメンタムが回復する象徴となりました。

何が起きたか

  • gepotidacin(Blujepa)が、まず尿路感染症で承認され、その後淋菌感染症に対しても新しい治療選択肢として承認されるなど、AMR領域での前進が可視化されました。

なぜ重要か

  • AMRは公衆衛生上の優先課題であり、“需要はあるが市場が難しい”典型です。新規クラスが出ること自体が、政策・調達・インセンティブ設計を再点火させます。
  • 感染症は「適正使用」と「収益化」が衝突しやすい領域。ここを解く仕組みが、次の産業テーマになります。

2026年への示唆

  • 抗菌薬は“承認”で終わらず、普及モデル(保険、備蓄、調達)まで含めた制度設計が焦点になります。

まとめ:10位〜6位が示した2025年の本質

2025年は、研究開発の勝負だけでなく、規制・安全性・製造・償還が“プロダクトの価値”を決める年でした。裏を返せば、ここを設計できる企業・チームが、2026年以降に大きく伸びます。

次回(12/31公開)は、5位〜1位として、肥満薬(GLP-1)と経口化、ADCの成熟、中国ライセンスの主流化、M&A再加速など、資本と競争地図を決めた“主役級”ニュースをまとめます。

本記事は公開情報をもとにMorningglorysciences編集部が論点を整理し、背景と示唆を加えて編集しました。

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し本格的に治療法・治療薬創出に取り組み、成功体験を得る。その後複数のグローバル製薬会社に在籍し、研究・ビジネス、そしてベンチャー創出投資家を米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。アカデミアにて大学院教員の役割も果たす。

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