2025年の後半戦(5位〜1位)は、産業の「重心」を動かしたニュースが並びます。キーワードは、肥満薬(GLP-1)の第二幕=“経口化とアクセス設計”、ADCの成熟、中国発ライセンスの主流化、そしてM&Aの再加速です。
前編(10位〜6位)で整理したとおり、制度・安全性・供給が“勝敗の条件”になりました。後編では、その条件下で、どの市場とモダリティに資本が集中し、どのプレイヤーが優位に立ったのかを俯瞰します。
第5位:CAR-Tが“ニッチ”から外へ—辺縁帯リンパ腫(MZL)で初のCAR-T適応
細胞医薬は、臨床価値の大きさと同時に、製造・施設・費用の壁が常に論点でした。2025年は、CAR-Tが適応を積み上げ、特定の血液がん領域で「特殊治療」から「標準治療へ近づく」局面が一段進みました。
何が起きたか
- 米国でBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)が、成人の辺縁帯リンパ腫(MZL)に対して米国初のCAR-T治療として承認されました(再発/難治、複数治療歴の患者)。
なぜ重要か
- 適応拡大は、治療インフラ(紹介経路、施設整備、患者選別、毒性管理)の投資合理性を高め、細胞医薬の“普及フェーズ”を押し上げます。
- 一方で、次世代(製造短縮、外来化、in vivo含む)との競争も鮮明になります。
2026年への示唆
- 「効果」だけでなく、実装(施設・コスト・導入速度)で勝つプレイヤーが伸びます。
第4位:中国発ライセンスアウトが“主流化”—パイプライン補充の重心が多極化
2025年は、中国由来の創薬アセットが、グローバル製薬にとって「例外」ではなく「通常の調達先」として位置づく流れが加速しました。これは単なる件数増ではなく、価値(総額)ベースでも存在感が高まっている点が重要です。
何が起きたか
- 中国発の候補品が臨床入りする比率が増え、ライセンス取引でも存在感が拡大。オンコロジーを中心に、代謝・免疫などにも広がりました。
なぜ重要か
- 大手は、特許崖と価格圧力の中で、パイプライン補充を「米欧バイオ」だけでは回しきれません。中国ソースは、スピードとコスト効率の観点で合理性が増しています。
- 同時に、地政学・品質・データ整合性を踏まえたデューデリの標準化が不可欠になります。
2026年への示唆
- 成功の鍵は「誰から買うか」より「どう契約し、どう統合するか」。CMC、臨床運用、規制戦略を含む“統合力”が差になります。
第3位:M&A再加速—特許切れと成長再建の現実解として“買って埋める”が復権
2025年は、買収が“例外的イベント”ではなく、構造要因(特許崖、価格圧力、開発確率)に対する合理的手段として再評価されました。特に、ワクチン・免疫・オンコロジー周辺で、戦略的な補完が目立ちます。
何が起きたか
- 年末には、SanofiがDynavaxを約22億ドルで買収する合意を発表するなど、領域補強型の取引が象徴的に報じられました(成人ワクチンの強化)。
なぜ重要か
- 新薬の内製だけでは確率論的に埋まらないギャップを、M&Aで埋める動きが合理化されています。
- 「何を買うか」以上に、「買った後にどう伸ばすか」(製造、流通、償還、商業化)が勝敗を決めます。
2026年への示唆
- “商業化できる資産”のプレミアムは上がりやすい。後期・差別化・供給の強さが評価軸になります。
第2位:ADCが“第二の主役モダリティ”として確定—後期パイプラインと市場の厚みが拡大
ADC(抗体薬物複合体)は、2025年に「ブーム」から「産業の柱」へ移行しました。成功例が積み上がり、後期パイプラインが厚くなり、提携・買収・共同開発の中心テーマとしての存在感が増しています。
なぜ2025年が重要だったか
- ADCは、標的選択、リンカー設計、ペイロード、毒性管理、バイオマーカー、併用設計など、最適化のレバーが多い“工学系モダリティ”です。2025年は、その最適化競争が一段進みました。
- 企業戦略としては、オンコロジーの成長エンジンとして、「自社で作る」だけでなく「提携で取りに行く」動きが加速します。
2026年への示唆
- 次の焦点は、耐性と安全性(例:ILDなど)をどう制御し、併用でどう勝つか。臨床デザインの巧拙が成果を左右します。
第1位:肥満薬(GLP-1)市場が“第二幕”へ—経口化とアクセス設計が勝敗を決める
2025年の最大ニュースは、肥満薬市場が「週1回注射の覇権争い」から、“経口化とアクセス(償還・価格)設計”を含む総力戦に移ったことです。ここでの勝敗は、臨床効果だけでなく、継続率、供給能力、支払いモデル、そして患者体験で決まります。
何が起きたか
- 米国で、Novo Nordiskの経口版Wegovy(セマグルチド)が承認され、肥満治療が「注射が前提」ではなくなる道が開きました。
- 同時期に、米国の公的側(CMSなど)で、GLP-1のカバレッジ拡大モデルが提示され、アクセス設計が政治・制度の中心テーマとして動きました。
なぜ重要か
- 肥満は巨大市場ですが、ボトルネックは「需要」ではなく、供給・価格・継続率です。経口化は需要を拡大し得る一方で、価格競争も誘発します。
- 製薬企業は、製造能力とコストを武器に、保険者・公的制度との交渉力を競う“総合戦”に入りました。
2026年への示唆
- 経口GLP-1が「市場拡大」に振れるか「価格下落」に振れるかは、償還設計と供給能力で決まります。勝者は“臨床+製造+制度対応”を統合できるプレイヤーです。
まとめ:2025年が固定した“勝ち筋”
2025年の総括はシンプルです。肥満(代謝)× がん(ADC)× 中国(創薬ソース)× M&A(資本の再配分)が、次の数年の競争地図を固定しました。ここに、前編で扱った制度・安全性・供給の条件が重なり、2026年は“実装力”の差がさらに拡大するはずです。
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- 中国ライセンスのデューデリ:品質・CMC・規制戦略のチェックリスト
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本記事は公開情報をもとにMorningglorysciences編集部が論点を整理し、背景と示唆を加えて編集しました。
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