Rare & Pediatric Disease News Vol.3:小児がんの治療薬は大人と同じで良いのか?

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成長過程にある子どもたちに、本当にふさわしい治療薬を

ヒトは胎児期から成人に至るまで、およそ20年をかけて発達・成長します。生後3,000gで生まれた個体が10〜20倍にも成長するその過程で、ホルモンや代謝機能、免疫反応などが大きく変化します。

そのような発達途中の身体に対し、成人向けに開発された抗がん剤を使用することは本当に適切なのでしょうか?答えは多くの場合「No」と言わざるを得ません。実際に、小児に最適化された抗がん剤は非常に限られています。

小児がん用の薬が少ない理由

小児がんの患者数は疾患ごとに非常に限られており、製薬会社にとっては市場規模が小さく、投資優先度が低くなりがちです。商業的にはリターンの見込みが少なく、積極的な開発対象として扱われにくいのが現実です。

それでも、一人ひとりの命に向き合う

私はアメリカの小児がん研究病院で創薬に従事していました。そこでは、手術痕の残る頭を丸めた子どもが点滴棒を押しながらカフェテリアで家族と食事をしている日常がありました。彼らにとって「がん」という言葉の意味すら分からない年齢かもしれませんが、その命はひとつとしてかけがえのないものです。

体重換算では語れない小児薬の難しさ

成人の半量を体重換算で投与すれば良い——そんな単純な話ではありません。子どもの身体は代謝酵素の発現レベルや臓器の成熟度が異なるため、予期せぬ副作用が生じるリスクがあります。だからこそ、小児専用の薬が必要なのです。

バイオベンチャーと支援者の挑戦

近年、技術先行型のバイオベンチャーが小児がんや希少疾患に挑戦するケースが増えています。その背景には、志ある投資家や患者団体、グローバル展開を視野に入れた支援の存在があります。とはいえ、製薬会社にとっては優先順位が下がる中、行政や社会からの後押しが不可欠です。

まず「患者が思い浮かぶ」世界へ

制度、資金、社会的マインドセットのすべてが、最初に「患者」を思い浮かべて動けるようになったとき、はじめて小児がん治療の未来が開かれていくのではないでしょうか。目に見えないその努力が、いつか確かな希望となって還ってくると信じています。

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この記事を書いた人

大学院修了後、米国トップ研究病院に留学し、治療法・治療薬創出に本格的に取り組む。博士号取得者(PhD)。複数のグローバル製薬会社で研究・ビジネス、そしてベンチャー投資家として、米国ボストン、シリコンバレーを中心にグローバルで活動。国内外で新規治療薬の上市に貢献し、複数の研究賞受賞歴あり。アカデミアでは大学院教員も務める。

論文・承認・臨床・投資——単なるニュース速報ではなく、「なぜ今これが起きているか」「次に何が来るか」を、独自の視点と MyThought で読み解きます。

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